キンキラキンの銅像、タワーマンション、豪華レジャー施設。金正恩党委員長が最高指導者となって以来、北朝鮮では新たな建造物が相次ぎ誕生している。その建設に投入される労働力の多くが、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士だ。

ところが最近、その兵士の数が不足しつつあるため、当局は徴兵の対象を拡大する措置を取った。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

北朝鮮当局は既に、男性の10年の兵役を11年に延長し、徴兵の対象外だった女性にも7年の兵役を課す措置を取っている。少子化で若者の数が減り、人員不足が深刻なレベルに達しているからだ。しかし、兵役逃れが横行し、思ったように人が集められていないのが現状だ。

業を煮やした当局は新たに二つの施策を取ることにした。そのひとつがさらなる兵役延長だ。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の情報筋によると、最近、平壌から「30代中盤まで兵役を務めさせよ」との指示が下された。具体的に何年かは定かではないが、17歳から35歳まで兵役を務めたとすると、その年数は18年にもなる。ちなみに韓国では1年9ヶ月から2年、世界的に見て兵役が長いと言われるイスラエルでも3年であることを考えると、18年は異常だ。

もうひとつの施策は、徴兵対象の拡大だ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、今までは協同農場、鉱山など不人気職種に親が従事している場合、親と同じ職場に勤める条件で徴兵が免除されていたが、これが撤廃された。また、一人息子、すでに就職した若者も徴兵されることになった。

各地域に割り当てられた徴兵のノルマを到底達成できないため、数合わせのために若者を片っ端から軍隊に放り込むという、戦争末期の日本軍同様の様相を呈している。

前述のとおり、北朝鮮では少子化が進行し、若者の数が減っている。

これには様々な理由があるが、食糧配給、医療、福祉、教育などのシステムが1990年代末の大飢饉「苦難の行軍」の頃に崩壊し、未だに再構築ができていないため、出産、育児を安心して行えない状況にあることが最も大きな原因だ。それが、軍隊に人員不足を生じさせるほどに深刻なレベルに達しているということだ。

また、苦難の行軍前後に生まれ育った世代は、満足な食事ができなかったため、体格が小さかったり、病弱だったりする。ところが、最近ではこのような若者でも徴兵されるようになっている。

しかし、待遇の改善は全くなされていない。

兵士の食糧は協同農場から供給されるが、凶作、交通インフラの未整備、横流しなどで、規定の量が守られず、栄養失調に陥る兵士が後を絶たない。

食糧確保のために山菜採りにでかける、といった例はまだましな方で、基地周辺の民家や農場を襲う「盗賊」と化すケースも少なくない。今回の措置は、それらの犯罪行為をさらに助長する恐れもある。

そもそも、なぜこれほど兵役が長いのだろうか。

それは、命令ひとつでいくらでもタダ働きさせられる労働力を確保するという目的がある。北朝鮮軍の兵士の多くは、戦闘訓練よりも、建設現場や協同農場での労働に従事している。機械化が極端に遅れている北朝鮮では、「人海戦術」への依存度が高い。ところが、それだけの労働力に賃金を支払うだけの財源はない。

公式には税金を徴収する仕組みがないからだ。だから、タダ働きさせられる労働力が必要なのだ。

経済活動に従事すべき人口を軍隊に振り向けることにより、経済発展にも多大なる影響が出る。

だからといって、兵役期間を他の国と同等のレベルまでただちに短縮することもできない。兵役には、余剰労働力の吸収、活用という側面がある。兵役を急に短縮して、一度に大量の人員を社会に戻すと、数十万人単位の余剰労働力が発生することになり、職にあぶれた人々が犯罪に走る可能性もある。「北朝鮮というシステム」は、行き詰ったまま走り続けているのだ。

北朝鮮当局にできることは、核実験や、プロパガンダ用の建築ではなく、今後の経済発展の基盤となるインフラ整備に注力し、経済のパイを増やしていくことだ。それは、余剰労働力の吸収、さらなる経済発展へと繋がるだろう。

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