人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮の政治の基本は「徳」だ。徳のある最高指導者が、人民に安定した生活など善政を保証することで人心を引きつけるというもので、現実にそれが出来ているかどうかは別として、数千年前に孔子が説いた考えが今も重んじられている。

それが物質化したものが「贈り物」だ。金日成主席も金正日総書記も、事あるごとに人民に贈り物をした。金正恩党委員長も自分の誕生日である1月8日、全国の子どもたちにお菓子セットをプレゼントしたと、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

北朝鮮当局が2017年に配ったお菓子セット(上)と最近配ったお菓子セット(下)(画像:デイリーNK内部情報筋提供)
北朝鮮当局が2017年に配ったお菓子セット(上)と最近配ったお菓子セット(下)(画像:デイリーNK内部情報筋提供)

本人は自分の誕生日を記念日とすることを「固辞している」と伝えられているが、全国的に同氏の誕生日を祝う行事が7日に行われ、子どもたちにお菓子セットがプレゼントされた。このお菓子セットだが、今まで様々なトラブルを引き起こしてきた。

例えば、2017年の太陽節(金日成氏の生誕記念日)に配ったお菓子セットのセレクトが不評で「不味い」と大ブーイングを受けた。

(関連記事:金正恩氏が配る激マズ「ミサイルお菓子」に子供たちから悲鳴

また平壌の小学校では、金正恩氏の名前で配られたお菓子セットが不味すぎて、ぶつけていたずらするという「政治的事件」を引き起こしてしまった。北朝鮮の子どもたちは、中国製のスナック菓子の味に慣らされ、舌が肥えているのだ。

(参考記事:金正恩氏が配ったお菓子セット、不味すぎて政治事件に発展

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

お菓子セットは、中央から配給された材料を使って地方の製菓工場が製造するが、砂糖などの材料は輸送過程で横流しされてしまう。残りの材料で作るものだから、美味しいものになるはずがないのだ。

(参考記事:国連の孤児用のビスケット、北朝鮮の軍や市場に横流し

ところが今回配られたお菓子セット、「袋にはキャンディとビスケットが入っていたが、質が大幅に改善した」(情報筋)と評価された。

中身は豆キャンディ(揚げた大豆に飴をコーティングしたもの)100グラム、一般的なキャンディ400グラム、ビスケット200グラム、子ども菓子(ベビーカステラ)240グラム、風船ガム2つ、5枚入りのミントガム2箱で、2017年の太陽節に配られたものと構成は似ているが、質が全く異なり、中でもビスケットはとても美味しかったとのことだ。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

以前のお菓子セットが大不評だったことは、当局も当然知っている。お菓子セットは幹部の子どもたちにも配布されるが、不味いと言って食べようとしなかったからだ。それで何らかの対策を立てたもようだ。

「ビスケットを食べてみたが、前のように固くて湿気た感じはなく、サクッとしていて柔らかだった。甘くて子どもたちも喜んだ。また去年のキャンディは(口に入れると)すぐに溶けて口の中にひっついたものだったが、今年のものはきちんと砂糖を使って作ったのでひっつくことはない」(情報筋)

評判は上々だが、平壌で作られている「金カップ」ブランドの高級スナック菓子にはかなわないとのことだ。

(参考記事:地方の零細商人を踏み潰して荒稼ぎする平壌の国営企業

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

経済的に余裕があり、市場で美味しいお菓子を買って食べることのできる家庭は従来、受け取ったお菓子セットを他人にあげたり、市場で売り払ったりしていた。しかし安値しか付かないので、最高指導者の顔に泥を塗る結果になっていた。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が昨年伝えたところによると、中国製のお菓子は1キロ1万北朝鮮ウォン(約140円)、朝鮮国内の個人業者が作ったお菓子は、量はやや少ないものの5000北朝鮮ウォン(約70円)で売られているが、最高指導者のお菓子セットはその半額で売られていたというのだ。

幸いにして、今年のお菓子は美味しいので、値段も上がるだろうと情報筋は見ている。