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北朝鮮では、学業や兵役を終えた男性はすべて、国の機関、国営企業などに配属されることになっている。「無職」であることは許されないのだ。たとえ商売などで収入を得ていても、所属する機関に出勤しないことは違法行為で処罰の対象になる。法律には、次のような条文まである。

行政処罰法第90条(無職、遊び人行為)

正当な理由なく、6ヶ月以上派遣された職場に出勤しなかったり、1ヶ月以上離脱した者は、3ヶ月以下の労働教養をさせる。罪状の重い場合には、3ヶ月以上の労働教養をさせる。

この法律が適用されたのだろうか、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の茂山(ムサン)鉱山所属の労働者50人が、新年になってから出勤しなかったとの理由で労働鍛錬隊、つまり刑務所送りになったと現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。無断欠勤日数に応じて1ヶ月から6ヶ月の処分が下されたとのことだ。

北朝鮮でも有数の「リッチな鉱山都市」と言われた茂山で、何が起きたのだろうか。

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莫大な鉄鉱石推定埋蔵量を誇るこの鉱山だが、推定埋蔵量は30億トンとも70億トンとも言われ、生産能力は年間650万トン、年間1億ドル(109億円)の外貨を稼ぎ出し「朝鮮の宝」と言われてきた。

中国の天地鉱業貿易有限公司は2003年、1億3000万元(約22億円)を投資し、中国の南坪鎮に作った精錬工場と、同鉱山を結ぶパイプラインや積み出し用の貨物駅を建設し、年間50万トンの鉄鉱石を中国に輸出していた。

2013年には中国への輸出が増え労働者への配給が復活し、月給が100倍に引き上げられた。月給30万北朝鮮ウォン(約3900円)のうち、3分の2はコメ、野菜、生活必需品などの現物支給、3分の1は現金で支給する形で、労働者から大歓迎された。月給は最高で100万北朝鮮ウォン(約1万4000円)に達したと言われている。一般的な労働者の月給の20年分に相当する額だ。そんな彼らが落とすカネで、地域経済も潤っていた。

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ところが、2014年末から干ばつによる電力不足などで苦境に追い込まれ、労働者のリストラが始まった。そこに加えて、金正恩党委員長が繰り返し核実験、ミサイル実験を行ったことで、国際社会から制裁を加えられ、鉄鉱石が輸出できなくなってしまった。

(参考記事:北朝鮮の資源ビジネスに暗雲!「朝鮮の宝」茂山鉱山で大幅なリストラ?

労働者は生き残るためにヤマを去り、多くの子どもが取り残されコチェビ(ストリート・チルドレン)になるなど、豊かだった町は奈落の底に叩き落とされた。

(参考記事:北朝鮮有数の鉱山が操業中断、路頭に迷う子供たち

労働者は生き残るために「8.3稼ぎ」を始めた。職場の上司にワイロを掴ませて出勤扱いにしてもらい、商売に精を出すというものだ。しかし、当局の立場からすると、アジア最大の露天掘り鉱山で鉄鉱石の推定埋蔵量が49万トンに達する茂山鉱山が崩壊しつつあるのは、看過できない現象だ。そのため、強硬手段に出たというわけだ。

(関連記事:北朝鮮、理不尽な「罰金制度」が慣習に 欠勤の罰金として給料数ヶ月分