北朝鮮の企業所(会社)で働いているにもかかわらず、給料をもらえず、逆にお金を出して出勤するケースがあると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えてきた。

北朝鮮の労働者に「月給はいくらかもらっているのか?」と聞くと、奇妙な答えが返ってくることが多々ある。

「月給はもらえず、むしろこちらがが金を払って出勤している」

北朝鮮当局から各工場、企業所に押し付けられる数々の「課題」、つまり物品の供出や建設現場への動員などをやりすごすためには、それなりのお金が必要になるからだ。

そうした面倒な課題に加えて、最近では「欠勤」に対して数カ月分の月給にあたる罰金を払わせているという。

運営費、賄賂も稼いで労働者の統制まで、拡散する罰金制度。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は次のように語った。

「罰金に正式な規定はない。工場の支配人が勝手に決めるが、出さなければ嫌がらせを受けるので仕方なしに出す。私が勤める工場では、現金ではなく『ガソリン3リットル』を収めなければならない」

ガソリン3リットルは、月給の何倍にもなる。こうした新手の「収奪」が全国に急激に広がりつつあるというのだ。参考情報として、2月中旬のガソリン1リットルの値段は、平安南道の南浦(ナムポ)で6000ウォン(約84円)だ。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の別の情報筋によると、罰金の名目は「運営費に廻される」とのことだが、やはり工場の幹部たちの懐に入るという。

「どうやら、罰金制度を煽っているのは当局らしい。労働者の状況を把握、統制するのにもってこいだから」

こうした動きに対して中国の対北朝鮮情報筋は「北朝鮮でもゆるやかに資本主義のやり方が浸透しつつある現象といえる。罰金という名の賄賂と思えばいい。この制度は定着するかもしれない」と語った。

商売が忙しくて会社に行けない北朝鮮の庶民たち

新手の「罰金制度」が導入されるかなり前から、勤務先に一定のお金を払って出勤を事実上免除してもらう「8.3ジル」という習慣がある。これは中国や国内各地で「走る商人」つまり担ぎ屋をしている人々がよく使う手段だが、この習慣も並行して行われている。

一般労働者の「8.3ジル」は、総和のある日を除けばほとんど出勤しないが、公務員や幹部の場合は週に2~3日は出勤する、もしくは毎日出勤して早引けする形を取っている。

両江道の女性はRFAに「新聞社に務める友人は週に3回だけ出勤して残りは市場で商売している。夫が亡くなり一人で娘を育てるためには商売せざるを得ない。新聞社も大目に見てくれているようだ」と8.3ジルの実例を語った。

ちなみに、8.3とは1984年8月3日に故金正日氏が平壌市軽工業製品展示場を現地指導した際に「廃材や副産物を使った人民消費品(生活必需品や食料品)生産運動を全群衆的に拡大実施せよ」との指示を下したことに始った8.3人民消費品創造運動が語源となっている。

自分の職業とは関係なく、品物を自宅で作りたいと希望する人に対して当局は許可を出しそれらの製品は「8.3製品直売店」で販売した。これを「8.3ジル」と呼ぶようになり、その時人々が体得した知識や経験が現在の市場経済の基礎となっている。

あの手この手を使って、なんとか庶民から収奪しようと血眼になっている北朝鮮当局だが、理不尽な罰金制度は、庶民の生産活動のモチベーションを下げるだけだ。やはり、当局はもう少し経済の基礎を学ぶところからはじめるべきだろう。

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