北朝鮮名物としてすっかり定着したマスゲーム。数万人が一糸乱れぬ動きを見せる華麗な演技は、多くの外国人観光客はもちろん、南北首脳会談で平壌を訪れた文在寅大統領など韓国政府関係者も魅了した。

5年ぶりの復活となったマスゲームだが、今年の作品「輝く祖国」は、南北首脳が抱き合う映像が流されるなど、南北融和ムードを意識した演出となっている。今年の公演は11月4日をもって幕を閉じたが、参加させられた平壌市民、特に子どもたちはその「後遺症」に苦しんでいる。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の平壌の情報筋によると、今年のマスゲームには10代はもちろん、5〜6歳の子どもまでが大量に動員された。

幼稚園は舞踊や体操に秀でた園児を選抜した。また、小中高校はアリラン(かつてのマスゲームのタイトル)班を作り、勉強そっちのけでマスゲームの練習、リハーサル、公演に当たらせたという。

子どもたちがそんな苦行に耐えたのも、それなりに「お目当て」あったからだ。

最高指導者も観覧するマスゲームだけあって、熱心な姿勢が認められれば、進学や就職に有利に働くものと思われる。また、子どもたちを引きつけたのは「年末に大きなプレゼントがもらえる」という話だ。

別の情報筋によると、噂が出ていた「プレゼント」とは、大型の液晶テレビだったそうだ。その話に釣られて、マスゲームに出たいという人が殺到したという。

ところが結局のところ、液晶テレビは配られなかった。どうやら担当の幹部が上部の許可なく勝手に約束してしまったようで、この幹部は処罰された。中央は「観覧した中国人観光客から入場料を回収できていないのでプレゼントができなくなった」という苦しい言い訳をしているという。

このような「期待の暴走」は北朝鮮でしばしば見られる現象だが、叶えられなかった場合にその不満は体制に向きかねないので、当局としても頭の痛い問題だろう。

問題はそれだけにとどまらない。体の不調を訴える子どもが続出しているのだ。

子どもたちは30度を超える暑さの中でマスゲームの練習や公演をさせられたせいで、関節炎、膀胱炎、神経痛を訴えて病院を訪れているという。

「マスゲームを見る立場からすると楽しいかも知れないが、公演に参加させられた人の苦痛は非常に大きかった」(情報筋)

年端の行かない子どもも、弁当を持参して朝7時から夜10時までの強行軍を強いられたが、国からの言いつけとあっては、親たちも心を痛めつつも見守るしかない。親たちは帰宅した子どもたちの足を洗ってあげたり、夜通しマッサージしてあげたりして、翌日の公演に備えたとのことだ。

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