北朝鮮の刑法第256条には、次のように定められている。

北朝鮮刑法第256条(迷信行為罪) 金または品物を受け取って迷信行為を行った者は1年以下の労働鍛錬刑に処す。複数名に迷信行為を教えたり、迷信行為で重大な結果を生んだりした場合は、3年以下の労働教化刑に処す。罪状の重い場合には3年以上7年以下の労働教化刑に処す。

ここで言う「迷信」とは占いや宗教を指すが、北朝鮮は、サウジアラビアやブルネイ、ベトナムなどと並んで占いを禁止している国だ。同じ「迷信」扱いにされるキリスト教などの宗教と比べると、占いへの取り締まりは弱かったが、最近になって逮捕者が出ている。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、道内の恵山(ヘサン)市で先月17日、多くの人にサルプリ(厄払いの儀式)を行い、運勢を占っていた女性占い師が逮捕され、教化所(刑務所)送りとなった。

この女性は、恵山市内のみならず、130キロも離れた金亨稷(キムヒョンジク)郡まで出向き出張占いを行っていた。女性客4人も逮捕され、労働鍛錬刑4ヶ月の処分を受けた。女性占い師はほかにも多くの顧客を抱えていたため、今後、逮捕者が続出すると情報筋は見ている。

「今回のような一斉逮捕は、迷信を根絶やしにするという意思を住民に見せつけたものと見るべきだろう。また今後、取り締まりを強化するという予告とも取れる」(情報筋)

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当局は今年7月、「苦しい生活を余儀なくされている人々の間で迷信が大流行している」との報告を受け、迷信根絶を目的にした常務委員会を招集し、迷信の深刻さを注意喚起するための方針と布告を発した。

布告は迷信行為を「(朝鮮労働)党に背き、個人に対する幻想を生み、党と大衆を引き離す行為」として、「迷信行為を助長した者、同調した者をすべて厳罰に処す」方針を示した。しかし、占いを止める気配が一向に見えなかったため、当局は強硬策に出たものと思われる。

しかし、占い師の上客の中には、地方政府の幹部も多く含まれているはずだ。それなのに逮捕されたてしまったのは、ワイロを渡すのを怠ったか、運悪く取り締まりキャンペーンの見せしめとなったからかもしれない。

韓国の東亜日報の記者で脱北者のチュ・ソンハ氏は、北朝鮮の現状を「迷信の全盛時代」「幹部も占いに頼るので統制も意味を持たない」と説明している。

「最近ではついに、国家安全保衛部(保衛部、秘密警察)の捜査官もこっそりと占い師の家を訪ね、犯人を見つけてくれと頼んだりもするようになった」のだという。

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中には、保衛部から脱北を勧められた占い師もいる。北朝鮮で占い師だったソク・ソヨンさんは、取り締まりにやってきたた保衛員(秘密警察)から「そんなに占いがしたいのなら、中国や南朝鮮(韓国)に行けばいい」と言われたことをきっかけに脱北、今ではソウル郊外で占い業を営んでいる。

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