北朝鮮で「占い」は「迷信」「非社会主義的」とされ、違法とされている。刑法では、占いや宗教を含む「迷信」を次のように規定している。

刑法256条(迷信行為罪) カネまたはモノを受け取り迷信行為を行った者は1年以下の労働鍛錬刑に処す。前項の行為の情状が重い場合には3年以下の労働鍛錬刑に処す。

当局が占いを取り締まるのには別の理由も存在する。北朝鮮では、最高指導者(金正恩党委員長)が、神に相当する存在であり、それ以外の人間が「神通力」を発揮してはならないという理屈からだ。

正恩氏を占ったら…

しかし、取り締まる側の警察官や幹部が、占いにハマっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

RFAの咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、「最近、保安員(警察)や保衛員(秘密警察)の間で、占いが流行っている。国内外の情勢が不安を増す中、占いに頼ろうとする風潮はかつてなく高まっている」と語る。

北朝鮮でタブーだった占いは、1994年に金日成氏が逝去し、社会不安心理が広がったことをきっかけに、流行りはじめた。今では高級幹部も占い師の上客で、大金を支払って自分と国の未来を占ってもらう。

ところが、そこからとんでもない噂が広まりだした。

「高級幹部は自分の運勢のみならず、金正恩氏の運勢も占うのだが、占い師たちが『金正恩氏の運は2019年に尽きる』と言っていることが知れ渡り、高級幹部の間で『金正恩氏2019年終末論』が密かに拡散しつつある」(情報筋)

情報筋は「終末論」の詳細には言及していないが、「政権や本人の命運が2019年に尽きる」という内容であることは想像に難くない。噂がもはや看過できないほど広がったのか、保衛部が取り締まりに乗り出した。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は語る。

「今月中旬に開かれた幹部を対象とした政治講演会で『最高尊厳に対する名誉毀損は厳罰に処する』との方針が伝えられた」

ところが、その話を聞いた参加者の反応は今までとは違い、無反応だったりして芳しくなかったが、その理由について情報筋は言及していない。同様の通達は、全国の人民班(町内会)の会議でも伝えられ、「金正恩氏2019年終末論」が庶民レベルまで広がっていることが窺い知れる。

北朝鮮の人々は、常に不安と戦い続けている。先日行われた核実験を受けて、北朝鮮国内からは、制裁が強化され、暮らし向きが悪化するのではないかという不安の声が伝わってきた。

「核のおかげで生活が良くなったのか。むしろ制裁のせいで生活が苦しくなっている」 「当局は5回目の核実験が成功したと大騒ぎしているが、庶民は食べていくのがさらに難しくなるのではないかと心配している」(咸鏡北道と両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋)

先が見えない不安は上流階級も同じだ。幹部はいつ粛清されるかわからず、トンジュ(金主=新興富裕層)は、財産をいつ権力に取り上げられるかわからない。そこで占い師に占ってもらって不安を解消しようという心理が働いているのだろう。それにしても、その占いが逆に社会不安を煽るのは、実に皮肉な話である。

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