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北朝鮮で占いは違法行為だ。刑法256条は、カネや物品を受け取って迷信行為を行った者は1年以下の労働鍛錬刑に、罪状の重い者は3年以下の労働教化刑に処すと規定している。しかし、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」から今に至るまで、北朝鮮の地から占いの火が消えることはなかった。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によれば、最近になり「よく当たる占い師」を探す人が目に見えて増えているという。

「普段はそんなことを考えていなかった人も、商売がうまくいかなかったりして経済的な苦境が続いているせいか、『迷信』をやろうとしているようだ」(情報筋)

南北、米朝首脳会談の開催が決定したが、国際社会の制裁強化で市場の景気は冷え込んだままで、市場の客足は落ち、商人たちの暮らしも苦しくなるばかりだ。不安ばかりの毎日で、少しでもすがれるものを探して占い師の元を訪れるというわけだ。

卸売業者たちは「占いをせずに出張に行くのが不安だ」と言って、よく当たる占い師がいれば遠くからでも訪ねていくという。結婚式の日取りを決めたり、子供の名前を付けてもらったりするにも占い師は欠かせない。よく当たると評判になった占い師の家には、朝から晩まで客が絶えないとのことだ。このように占いは北朝鮮の地にしっかり根付いている。

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デイリーNKの内部情報筋が秘密裏に撮影した動画には、北朝鮮での占いの様子が収められている。

【動画】北朝鮮国内で密かに行われている「占い」の現場

就職を控えた息子が結核になったと訴える相談者に、占い師は厄がついている、厄払いをするにはキビの餅を食べよとアドバイスしている。相談者は「厄」という言葉がわからないようで聞き返している。

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それでもダメならどうするかと尋ねる相談者に、占い師はさらなる報酬を要求し、トウモロコシ20キロを提示すると、明日の夕方になってからコメの研ぎ汁を1杯飲ませて、塩水で体を洗え、石鹸を使ってはならないとアドバイスした。

流行しているのは、占いばかりではない。「足と指の爪を切ったものを袋に入れて持ち歩くと忘れ物をしない」「塩に唐辛子粉を混ぜたものを持ち歩くと商売で損をしない」といったまじないも広がっている。

占いが家庭内の諍いにつながることもある。両江道の普天(ポチョン)郡のある家庭では、両親の還暦祝いの日取りを巡り息子たちの間でケンカとなった。両親と息子は占い師に日取りを見てもらおうとしたところ、別の息子が両親の誕生日にすべきだと譲らなかったというのがケンカの原因だ。

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いくら当たり前のものとなったとはいえ、占いはあくまでも違法行為で、取り締まりの対象だ。

北朝鮮で占い師を務め、今も韓国で占い業を行っているソク・ソヨンさんは、インターネット放送のベナTVとのインタビューで、脱北に至った過程について語っている。

小学校の教師を務めていたソクさんは、工場の幹部を務め、地域で人望を集める父親のもとで裕福な暮らしをしていた。ところが、父は罠にはめられて地位を失い、そのショックで脳出血を起こして倒れてしまった。3ヶ月後に奇跡的に回復した後、霊的な能力が備わり、幹部を相手に占いをして生計を立てていた。

ところが、地域の保衛部長(秘密警察のトップ)が銃殺されることを予言してしまったことから逮捕・拷問され、1年後に亡くなった。「政治的なことは占ってはいけない」というのが父の遺言だった。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は2016年10月、「2017年は赤酉の年。金正恩が血の粛清をすることにより、大規模な人命被害が起こる」と予言した占い師4人と、この話を広げた住民40人が不穏分子として逮捕されたと報じているが、政治的なことに言及するのは非常に危険な行為だ。

ソクさんは、夢に現れた亡き父から1冊の本を受け取ったことをきっかけに霊的な能力が備わり、占いをするようになった。しかし、何度も取り締まりにあったが、取締官から手荒なことはされなかった。それどころか「あなたのお父さんに大変お世話になった、立派な方だった。それなのにあなたはなぜ占いなんかをしているのか」と心配してくれるほどだったという。

取り締まりにやって来た保衛員(秘密警察)から「そんなに占いがしたいのなら、中国や南朝鮮(韓国)に行けばいい」と言われたことをきっかけに脱北、エリートで人格者の朝鮮族男性を紹介されて結婚し、吉林省の延吉で占いをして生計を立てた。

客になった公安局や市政府の関係者の助けで強制送還の危機を乗り越え、2011年にラオス、タイを経て韓国にやって来た。今は夫と共にソウル郊外で占い業を営み、幸せに暮らしている。