身分制度に縛られた朝鮮王朝時代、そして朝鮮人全体が二等国民扱いされていた日本による植民地時代を経て、万民が平等に暮らす社会になったはずの北朝鮮。しかし、皮肉なことに今に至るまで、すべての北朝鮮国民は「成分」と呼ばれる身分制度に縛られ生きている。

朝鮮労働党中央委員会は、1958年12月から2年間集中指導事業を行い、「不純分子」に分類した多くの人を粛清、追放した。その後も国民一人一人の「成分」を過去にまで遡って徹底的に調査する事業を繰り返し、国民を大きく分けて3つの階層に分類した。そのうち、全人口の2割が敵対階層(複雑階層)と呼ばれる階層に分類され、進学、昇進などで差別されている。

このような身分制度は徐々に緩和されつつあると言われているが、中国に8親等以内の親戚がいれば敵対階層に分類され、公職に就くことはできなかった。ところが最近では、身分よりも「ある種の能力」を買われた人が公職に選ばれるようになっている。

最近中国を訪れた平壌市民が米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、当局は国の政策に積極的に従う人や、多額のワイロを納める人を、積極的に登用しているという。

これまで中国に親戚のいる人は、ワイロをいくら払っても公職に就くことは不可能だったが、当局は今年春の中朝首脳会談を機にこうした措置を取ったと情報筋は見ている。

しかし、このような採用基準は明文化されたものではない。

RFAの平壌の別の情報筋は、今は中国との関係が良いので、当局は中国に親戚がいる人でも公職に登用しているが、今後また関係が悪くなればどうなるかわからないとしている。

「金日成時代から金正日時代、今に至るまで中朝関係は良くなったり悪くなったりを繰り返している。中国に親戚を持つ人は優遇されることもあれば、白眼視されることもあった」(情報筋)

公職者の中に中国に親戚がいる者が皆無というわけではなく、運良く当局に知られず昇進できた人もいる。しかし、いつ状況が変わるかわからないので、「実は中国に親戚がいます」と名乗り出る人はいないだろうと情報筋は見ている。

中国に親戚がいるのは、悪いことばかりではない。国内での移動の自由すら制限されている北朝鮮国民にとって、海外渡航は夢のまた夢だが、中国に親戚を持つ人は「私事旅行」と称して中国に出国する許可を得られることになっている。

その機会を利用して中国で働き、北朝鮮では想像もつかないほどの額のカネを稼ぐのだ。中には架空の親戚をでっち上げて中国に行く人もいる。

(参考記事:「偽装親戚」をでっち上げ、中国へ買い出しに行く北朝鮮幹部の妻たち

また、市場経済化が進み拝金主義が蔓延するにつれ、カネの力で「成分」を変更することも可能になっている。

(参考記事:「身分ロンダリング」で子どもを都会に送り出す北朝鮮の親心