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韓国のNGO・北韓人権情報センター(NKDB)の調査によると、韓国で暮らす脱北者10人のうち6人が、年間100万ウォン(約9万8000円)から300万ウォン(約29万6000円)を、北朝鮮に残してきた家族に送金している。

その仲介をしているのが、送金ブローカーだ。彼らは、保安署(警察署)や保衛部(秘密警察)にワイロを渡して送金を黙認させ、保衛部は彼らからの収入に期待するという共生関係にあると言われている。そんな送金ブローカーが、一斉に逮捕される事件が起きた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、中朝国境に面した茂山(ムサン)で今月9日、送金ブローカーと親しい住民など14人が、送金用のカネを受け渡している現場に踏み込まれ逮捕された。保安署に拘留され、取り調べを受けている。

通常、送金ブローカーが逮捕されるのは、ワイロの値上げ要求を拒否した場合や、政治的行事に必要な上納金を搾り取るために脅迫する場合などが考えられるが、今回は雰囲気が異なるという。

「今までケツ持ちをしてくれていた保衛部などの司法機関関係者が態度を豹変させたのを見ると、どうやら上からの取り締まり指示があったようだ」(情報筋)

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逮捕された送金ブローカーに対して保安員は、「他のブローカーを密告すれば罪を軽くしてやる」と持ちかけているという。

北朝鮮ではそもそも、海外送金も、それに必要な海外との連絡も違法行為だ。そこにつけ込まれてワイロを要求された場合、断るのは自殺行為だ。ワイロを払っていても問題が生じた際には、頼りになるのはコネとカネだ。今回はどうやらそれも通じない状況のようだ。

逮捕されたブローカーたちは「オイシい思いをしているのはわれわれだけではない」と、ワイロを渡していた保安員の名前を暴露しようとしたが、効果がなかったという。

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なぜ取り締まりが強化されたのか、理由は今のところ不明だが、9.9節(9月9日の建国記念日)70周年の行事に必要なカネをかき集めるためではないかとの見方、また携帯電話の通話による国外への情報流出を防ぐためのものではないかという見方がある。あるいは、「非社会主義現象」取り締まりキャンペーンの影響である可能性もある。

「カネを搾り取る目的なら、数人を捕まえて尋問、脅迫するはずだが、今回は芋づる式に送金ブローカーのネットワークをあぶり出そうとしている。携帯電話を使った海外との取引そのものを萎縮させようとしている意図かもしれない」(情報筋)

(参考記事:「カネはあるか?なければ死ぬぞ」…金正恩「拷問部隊」の恐喝手口

しかし実際のところ、北朝鮮と中国の国境地帯では、密輸や送金など海外との非合法なやり取りも、ワイロの要求ももはや地場産業と言っていいほどの状況になっている。つまり、取り締まりの強化は地元経済の悪化へとつながる。今回の一斉逮捕との関係は不明だが、韓国在住の脱北者の間では「北朝鮮にいる家族に送金したが届いていない」という話が最近になって急増しているとのことだ。

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金正恩党委員長は今年2月、「海外送金作業は度を越さない程度なら協力せよ。ただし、その過程で発生した手数料は国庫に納めよ」との指示を下たとされているのだが、方針を変更したのだろうか。

(参考記事:「送れど送れど減るばかり」脱北者からの送金にタカる北朝鮮秘密警察