戦後日本の三種の神器と言えば、テレビ、洗濯機、冷蔵庫だった。その後、時代の変化に応じて洗濯機、冷蔵庫の代わりにエアコンと自動車が加わった。

北朝鮮で三種の神器に当たるのが「五欌六機」だ。欌はタンスという意味だが、五欌は布団ダンス、衣装ダンス、茶ダンス、下駄箱、本棚。六機はテレビ、洗濯機、ミシン、冷蔵庫、扇風機、録音機を指すものだった。ところが、市場経済化の進展に伴い、その中身が変わりつつある。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、以前は五欌六機を持っている家は金持ちという認識があったが、最近では国内で入手できる電化製品の種類が増えたこともあり、富の基準も変わりつつある。

台所家電を見ると、五欌六機に含まれるのは冷蔵庫だけだったが、それは昔の話だ。今では炊飯器、真空包装機、電気ケトル、フードプロセッサーなども含まれる。

かつてはアイスクリームや肉類の販売をする人ぐらいしかもっていなかった冷蔵庫だが、今では一般家庭でも普及が進んでいる。また、2000年代に入ってから韓国クック社製の炊飯器やフードプロセッサーが北朝鮮女性の憧れの的となった。女性たちは、ドライヤー、美顔器などの美容家電の購入にも積極的だという。

(参考記事:北朝鮮で「韓流製品」をゲットするには?甘いソウル言葉で囁く「炊飯器」が大人気

2010年代に入ってから、韓流ドラマの視聴が密かに流行したこともあり、録音機を押しのけて五欌六機にランクインしたのはDVDプレイヤーだ。それが今では変圧器に取って代わられた。北朝鮮では110ボルト、220ボルトの電圧が併用されているが、まだまだ旧来の110ボルトを使っている家が多い。そのため、220ボルトの中国製や韓国製の電化製品を使うには、変圧器が必要となるのだ。

若い女性の髪型は、パーマよりストレートが流行しているが、これはヘアーアイロンさえあればいくらでもお望みのヘアスタイルに変えられることによるものだ。電化製品がもたらした変化と言えよう。

結婚シーズンともなれば、大型家電を扱う商人は1日に数十台の電化製品を売るという。

また南北の融和ムードを受けて、「ご禁制」の品とされている韓国製電化製品の解禁に対する期待も高まっている。

「今、北朝鮮で売られている電化製品のほとんどが中国製だが、今後は韓国製が入ってくるのではないかと期待する人も多い。韓国製品を持っていると金持ちという扱いになるため、合法的に買えるようになる日を心待ちにしている」(情報筋)

北朝鮮は深刻な電力難に苦しめられているが、そんなに多くの電化製品を買っても、無用の長物と化するのではないかと思う向きもいるだろうが、心配ご無用だ。

「最近は農村でも電化製品を買いたいという人が増えている。ソーラーパネルがあればある程度は電気がまかなえることから、家電ブームに影響を与えている」(情報筋)

(参考記事:北朝鮮の庶民の夢「ソーラーパネルを買って韓流ドラマを見たい」

都市部にとどまっていた市場経済化が、農村部にも波及しつつあることも、家電ブームを下支えしていると見ていいだろう。

(参考記事:北朝鮮の農村に小規模な市場が続々…進む市場経済化