北朝鮮の市場の数は、昨年3月の時点で400ヶ所を超え、増加の一途をたどっている。最近では、農村でも小規模な市場が形成されつつある。(参考記事:北朝鮮全国の市場が436ヶ所で利用客数100万人以上…米シンクタンクが分析

江原道の農村地域にできた市場(画像:デイリーNK内部情報筋)
江原道の農村地域にできた市場(画像:デイリーNK内部情報筋)

江原道(カンウォンド)のデイリーNK内部情報筋が撮影した画像には、田んぼのあぜ道や、村の中で穀物が売買されている様子が写っている。販売用かはわからないが、ソーラーパネルも見える。

農民にとっては、田植えの始まった今頃が1年で最も忙しい季節だ。わざわざ町の市場まで買い物に行くヒマもないほど忙しい。このように最近では農村周辺にも市が立つようになり、食糧や生活必需品の購入が楽になり、村人は「市場がもっと増えてほしい」と大歓迎している。

北朝鮮当局は、外国人観光客を誘致する目的で「元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区」というリゾートの建設を大々的に行っている。

(参考記事:対話ムードを受け「観光大国」への野心をふくらませる北朝鮮

工事関係者の急激な流入に伴い、道内には以前より豊富に物資が出回るようになり、都会でしか買えなかったようなものが、村の市場でも出回るようになった。しかし、なんでも揃うというわけではない。その穴を埋めるのは、行商人だ。

「都会でなければ買えないものは、行商人が運んでくれる。都会の人も田舎の人も儲かる仕組みだ」(情報筋)

北朝鮮で安全に商売するには、市場使用料を支払って市場の売台(ワゴン)を借りて営業する方法と、店舗、道端のプレハブなどに国の機関、国営企業などの名義を掲げて営業する方法の2種がある。一方でそんな余裕のない人々は、市場の周りで露天商として商う。しかし、当局の立場からすると、市場使用料を取りはぐれてしまうので、取り締まりの対象としていた。

これまでは保安員(警察官)がやってくると、野菜や豆を入れたタライを持って一目散に逃げるという光景が繰り返されてきた。その様子から「ダニ市場」「イナゴ商人」などと呼ばれているが、どうやら以前ほど厳しく取り締まらなくなっているようだ。実際、情報筋は、2年前から取り締まりが行われなくなったと証言している。

(参考記事:北全域の市場で『イナゴ商人』が増加中…取り締まりの効果なし

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の内部情報筋によると、日本海で取れる新鮮な海産物を自転車に積んで、内陸の農村に運んで販売する行商人は以前から存在したが、今では村の市場の商人に海産物を卸す形式も登場した。都会より高く売れるそうだ。

中には、市場税を払わなくて済むところに目をつけて、都会から農村の市場に行って店を開く商人すらいるそうだ。

このような市場は、鉄道の駅、バスターミナル、ソビ車(個人経営のタクシーや運送車両)が集まる高速道路のインターチェンジなど、流動人口の多いところには大抵形成されている。

北朝鮮の市場経済化が着実に進みつつあるのは確かだが、不安要素がまったくないわけではない。

「以前よりは確実に便利になり、住民は喜んでいるが、このような市場がいつまで取り締まられずに営業できるかが鍵だ」(情報筋)

取り締まりの権限は、保安員にとってカネ儲けの絶好のチャンスだ。商品などにいちゃもんをつけてワイロをせびり取るのだ。

(参考記事:庶民相手の「カツアゲ屋」に転落した金正恩氏のエリート部隊