北朝鮮当局は、今年初めから「非社会主義現象」、つまり当局が社会主義にそぐわないと考える行為に対する取り締まりキャンペーンを行っている。

韓国との融和ムードに浮かれ気味の国民に対する引き締め策と思われるが、その対象は「個人(利己)主義」「外貨を含むカネに対する幻想」「帝国主義者による思想・文化的浸透」「覚せい剤の乱用」など多岐に渡る。そのため取締官のさじ加減ひとつで何でも取り締まることができてしまい、庶民が理不尽な仕打ちを受ける危険が増している。

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市民の不満が最高潮に高まったことを意識してか、当局は取り締まりの緩和を始めたが、一部ではなお、強力な取り締まりを続けており、市民生活に悪影響を及ぼしている。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、家屋の一部を改造して商店にした北朝鮮版コンビニの「家売台」(집매대、チンメデ)に対する集中取り締まりが行われたと伝えてきた。

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人口63万人の清津(チョンジン)市内で、数十店舗から商品が没収され、損害額は1店舗平均で100万北朝鮮ウォン(約1万3000円)に達した。

とりわけ、無許可で医薬品を販売していた店舗に対する取り締まりでは、1店舗あたり少なくとも中国人民元で1万元(約17万円)の損害を被った。

「医師や薬剤師の免許はあるが、販売承認を得ずに自宅で医薬品を販売していた人々が取り締まりにあった。医薬品も収益もすべて没収され、お先真っ暗と嘆いている」(情報筋)

当局が集中的に取り締まったのは、市内の羅南(ラナム)製薬工場で製造された医薬品を全国に卸していた人々だ。横流しや個人間の取引をブロックし、医薬品流通の主導権を取り戻す意図があるものと思われる。

当局はまた、国家機関の名義を貸し与え、安全に商売をする見返りに、利益の一定額を事実上の税金として収めさせているが、そのような承認を得ていない業者を取り締まることで、税収を増やそうとする目論見があるとも言えよう。

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取り締まりは、市民生活に悪影響を及ぼしている。医薬品が品薄になり、価格が上昇したのだ。ペニシリン、モルヒネ、ジアゼパム(抗不安薬)は軒並み2割以上も値上がりし、ノボカイン(麻酔薬)に至っては3割も上がっている。卸売業者が集中的に狙われたことを考えると、医薬品価格の高騰は全国に広がる可能性もある。

それにしても何故、他の国なら処方箋なしで購入できない抗不安薬や麻酔薬がコンビニ的な店舗で買えるのか。それは、北朝鮮が誇る無償医療制度が崩壊したからに他ならない。

国営の人民病院に行くと、診察、治療を受けるためには多額のワイロが必要だ。さらに医薬品が不足しているため、市場や店舗で買うしかない。当局が地元工場製の医薬品を取り締まっているのは、人民病院への供給体制を正常化するためでもあるのかもしれない。しかし、病院に供給されても、結局は横流しされてしまうのがオチだろう。

情報筋は「今回の取り締まりで国産医薬品の価格が高騰したため、市民は中国製を買うようになった。こんな有様で自力更生が成し遂げられるのか」と嘆いた。