北朝鮮と国境を接している中国遼寧省の丹東。中朝貿易の中心地だが、国内外の観光客を引きつける観光都市でもある。

人々が丹東を訪れる理由は、北朝鮮を見るためだ。

丹東を訪れる観光客の多くが、国境を流れる鴨緑江の遊覧船に乗る。市内中心部から乗れる遊覧船が最も手頃だが、北朝鮮が手に取るように見えるとして、郊外の船着き場から出ている遊覧船も人気だ。

しかし、その遊覧船の運航ができなくなってしまっていると、現地のデイリーNK対北朝鮮情報筋が伝えてきた。中国当局が昨年末から国境沿いにフェンスと鉄条網の設置を進めているためだ。

フェンスに囲まれ利用できなくなった遊覧船の船着き場(画像:デイリーNK)
フェンスに囲まれ利用できなくなった遊覧船の船着き場(画像:デイリーNK)

工事が行われているのは、丹東市内から北東に約15キロ離れた虎山長城の周辺だ。明の時代に作られた長城が残る観光地だが、わずか数メートル向こうに北朝鮮が望める場所でもある。

虎山長城の裏手には鴨緑江の支流が流れているが、北朝鮮領の九里島(クリド)、于赤島(オジョクト)、多智島(タジド)を眺める遊覧船が人気を集めていた。

ところが、船着き場が中国当局が設置したフェンスに囲まれてしまい、遊覧船の運航ができなくなってしまった。

情報筋によると、昼間は観光客が多いが、日が暮れるとほとんど人がいなくなるため、密輸が横行している。当局は密輸を防止するためにフェンスを設置したものと思われる。当局の狙いは、遊覧船にも向けられているようだ。遊覧船を運航する旅行会社も副収入として密輸を行っているからだ。

昨年4月、鴨緑江を運航する船で品物の取引をする様子(画像:デイリーNK)
昨年4月、鴨緑江を運航する船で品物の取引をする様子(画像:デイリーNK)

夜になるとこの付近の食堂には、川を越えて朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士がやってきて、食堂で食べ物、ビール、タバコをねだりに来るという。断ると嫌がらせをされるため、食堂のオーナーは応じざるを得ないという。

(参考記事:脱北兵士の物乞いに悩まされる中国の住民たち

また、国境警備の強化で最近は収まっているようだが、中朝国境地帯の中国側では脱北兵士による凶悪犯罪が相次いでいた。

2014年12月には、吉林省和龍市の村の民家に北朝鮮軍の兵士が押し入り、4人を殺害し。カネを奪って逃げる事件が起きた。また、2015年4月にも同じ和龍市で北朝鮮軍の兵士が強盗殺人事件を起こしている