中朝国境の貿易拠点、遼寧省丹東市。そこから車を走らせること数十分で「河口景区」と呼ばれる地域に到着する。鴨緑江や周囲の山々を眺めながら食事を楽しめる食堂が立ち並ぶ。春には桃の花が満開となる風光明媚なところだ。
デイリーNK取材チームは先月末、この河口景区を訪れた。ボートを借りて鴨緑江の向こうの北朝鮮の様子を観察するためだ。
対岸は平安北道(ピョンアンブクト)の義州(ウィジュ)郡、朔州(サクチュ)郡、塩州(ヨムジュ)郡に当たる。国境警備隊31師団の管轄区域だ。
国境警備隊には、出身成分がよく、思想的に問題のない兵士が配置されると言われていたが、それも昔の話のようだ。

我々の乗ったボートが北朝鮮まであと数メートルのところまで近づくと、20代に見える兵士がニコニコしながらやってきた。ボートに同乗していた観光客が韓国語で話しかけた。「こんにちは。私たちは同じ民族です」
兵士は驚きもせず、ゆっくりと動く船に歩調を合わせた。船の漕ぎ手が「あれはカネを欲しがっているんだ」と耳打ちしてくれた。

100元(約1590円)札を折りたたんで川岸に投げた。兵士はそそくさと紙幣をポケットにしまい、笑顔を返してくれた。その光景を、第2経済委員会(軍需担当)傘下の軍需工場の女性保衛隊員(秘密警察)が、羨ましそうに見つめていた。
それもそのはず、コメが27キロも買える結構な金額だからだ。
10年以上に及ぶ兵役を終え、社会に戻るにはそれなりのカネが必要だ。ある人は密輸、ある人は観光客にカネをせびってせっせと稼ぐのだろう。
