中国国営通信の新華社は8日、北朝鮮の金正恩党委員長が7~8日に遼寧省大連を訪れ、習近平国家主席と会ったと伝えた。両氏は3月下旬に北京で会談したばかり。また、北朝鮮の最高指導者は訪中時に列車を使ってきたが、その慣例を破り、空路で大連入りしたもようだ。

習近平氏は、大連で国産空母の試験航海を視察する予定と見られており、そのスケジュールに合わせて首脳会談が組まれた可能性がある。

背景には米朝首脳会談を控え、米国が北朝鮮に対する要求水準を引き上げていることがあるように見える。

マイク・ポンペオ米国務長官は2日、北朝鮮の非核化の原則として従来の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)に替えて「永久的かつ検証可能で不可逆的な非核化」(PVID)を掲げた。用語の定義の違いについて具体的な説明はないが、CVIDが現存する核施設や核兵器の解体・廃棄と、核兵器開発プログラムの放棄が中心になるのに対し、PVIDは将来の核兵器開発の可能性を封印するため、これまでに得られた研究データの抹消や、ノウハウを持つ研究開発人員の監視までが含まれる可能性がある。

米国はさらに、生物化学兵器などの廃棄要求も掲げた。ジョン・ボルトン安全保障担当大統領補佐官は4日、日本の谷内正太郎・国家安全保障局長と面会し、「すべての核兵器や弾道ミサイル、生物化学兵器と、これに関連するプログラムを含めた北朝鮮の大量破壊兵器の完全かつ永久的な廃棄を達成しようという共同の目標を確認した」と述べた。

現状、北朝鮮が応じる意思を示しているのは「非核化」にとどまり、生物化学兵器は含まれていない。また、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験停止を宣言しているものの、短・中距離を含め弾道ミサイルの廃棄には言及していない。

米国はまた、5日には弾道ミサイル技術を利用した北朝鮮の人工衛星発射が国連安全保障理事会決議違反であるとの点を再確認した。北朝鮮は人工衛星の打ち上げについて、平和的な宇宙開発を目的としているため、制裁対象にはなり得ないと主張してきた。

こうした状況下、北朝鮮外務省の報道官は6日、朝鮮中央通信の質問に答え、次のように語った。

「歴史的な北南首脳の対面と板門店宣言により、朝鮮半島情勢が平和と和解の方向へ進んでいる時、相手を意図的に刺激する行為はようやくもたらされた対話の雰囲気に水を差して情勢を原点に逆戻りさせようとする危険な企図としか見られない。

米国がわれわれの平和愛好的な意志を『軟弱さ』と誤って判断し、われわれに対する圧迫と軍事的威嚇を引き続き追求するなら、問題の解決に役に立たないであろう」

こうした流れの中での金正恩氏の訪中には、中国を自分の側に引き寄せて米国をけん制し、必要とあらば米国との間で調整役を担わせようとの目的があるように見える。