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北朝鮮の憲法は75条で「公民は居住、旅行の自由を有する」と定めている。しかし、現実は全く異なる。北朝鮮国民は、国内での移動ですら許可が必要だ。海外渡航をするには極めて面倒な手続きが必要で、一般の人にとっては夢のまた夢だ。

ところが、どういうわけか北朝鮮の国家保衛省(秘密警察)が最近、一部の国民に中国旅行を推奨している。とは言っても、名所旧跡を回り、グルメに舌鼓をうつことを勧めているわけではない。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、国家保衛省は最近、一部の人を選んで「外貨を確保してくるなら時間をやるから私事旅行(親戚訪問目的の旅行)に行ってこい」と声をかけているという。

「保衛員はどこの国の商売人と協力して稼いだ金でも関係ない、出処は問わないと言っている」(情報筋)

これはつまり、韓国人と取り引きしても問題視しないということだ。

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このような指示は過去にも出ていた。

在中国北朝鮮大使館は2012年、中国に駐在する貿易関係者に対して「韓国人に出会ってもわざわざ避けることはない。ペースに引きずり込まれないよう臨機応変に対応せよ」との指示を下している。もちろん、これ以前からから貿易関係者は、ひそかに韓国人ビジネスマンたちとの間で直接、間接の関わりあいを持っていた。

(参考記事:「韓国とのビジネスを臨機応変に」当局の指示に当惑する在中北朝鮮貿易関係者

北朝鮮で貿易業に携わった経験を持つ脱北者によると、国から外貨稼ぎのノルマが割り当てられると、貿易会社を管轄する保衛員が私事旅行を勧めることがあったという。ただし、今回の奨励が国からの指示によるものなのか、道の保衛部の独自の判断によるものなのかは定かではない。

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中国のデイリーNK対北朝鮮情報筋は昨年2月、平安南道(ピョンアンナムド)の当局が、金正日花(ベゴニアの1品種)を育てる温室の拡張資金を確保するために、中国に親戚がいなくても確実に外貨を稼げる人を探していると伝えた。

このように、保衛部は誰彼かまわず私事旅行を勧めているわけではない。

「保衛員と親密な関係を築いている人、貿易会社と関連のある仕事をしている人、中国に親戚がいる人など、外貨を稼ぐあてがある人に限られる」(両江道の情報筋)

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一般住民にまで対象を拡大すると、統制が難しくなり、体制を脅かしかねないからだ。いずれにせよ、国際社会の制裁で北朝鮮の外貨事情がかなり逼迫しているのは確かなようだ。

本来、私事旅行に行くには非常に面倒な手続きを要する。

まず、配偶者と子ども、中国に5親等以内の親戚がいる人でなければならず、家族や親戚に脱北者や犯罪者がいてはならない。

パスポートや出国ビザを申請するには、親戚から招請状を受け取った上で、職場の長または人民班長、管轄の保衛指導員の承認を受ける。次に保安署(警察署)で申請者の親戚関係、犯罪記録を照会し、署長の承認を受けた上で、市、郡の党責任秘書、道の保衛部長、国家保衛省の承認を受ける。中国の入国ビザは、個人で申請できず国家保衛省が行う。

一連の手続きには数百ドルから数千ドルのワイロが必要なことは言うまでもない。

親戚をでっち上げてまで中国に行く人もいる。それほど儲かるということだ。滞在期間は最大で9ヶ月まで延長できるため、その間に親戚を回ってカネをかき集めたり、自分で働いたりして当局に上納する外貨を確保するのだ。