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国際社会の対北朝鮮制裁について、「効果が出ている」「さほど効果はない」といった相反する観測がある中で、北朝鮮国内のガソリン価格が下落に転じたと両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

それによると、今月20日ごろまでは13元(約220円、1万5250北朝鮮ウォン)だったガソリン1キロ(1.34リットル)の価格が、27日の時点で11元(約186円、1万2700北朝鮮ウォン)まで下落した。詳しい理由は詳らかでないが、ドライバーやガソリン販売店の間でささやかれているのは「ロシアからの輸入」だ。

「昨年末から、ロシアに派遣されていた労働者の稼ぎを搾取したカネで、当局がガソリン、ディーゼル油を買い付け、輸入しているとの噂が立っている。『火のない所に煙は立たぬ』はずだから、全く根拠のない話ではないだろう」(情報筋)

過去5年間の国際原油価格を見ると、2014年6月のピークか下落に転じて翌年2月に底を打ち、現在は再び上昇傾向にある。しかし、北朝鮮のガソリン価格の値動きは国際原油価格よりも、中国やロシアからの合法、非合法の輸入によって大きく左右される。

例を挙げると、昨年10月末にはガソリン1キロの価格が2万北朝鮮ウォン(約280円)を超えていたが、その後は下落傾向に転じた。5000北朝鮮ウォン(約70円)も値下がりしたときには、「中国からの援助によるものだ」という噂が広がった。

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また、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は2016年1月、平壌ではガソリン1キロが4.6元(約83円)、南浦(ナムポ)と黄海南道(ファンヘナムド)では5元(約90円)で売られていると報じたが、このときも「ロシアから原油が大量に入ってきた」との話が広がった。

(参考記事:北朝鮮、ガソリン価格が大幅下落…ロシアからの大量輸入が影響か?

国連安全保障理事会が昨年12月に採択した制裁決議2397号では、北朝鮮への原油輸出量を年間400万バレルまたは52.5万トン、石油精製品は年間50万バレルまたは52.5万トンに制限している。しかし、国連加盟国は3ヶ月に1回、輸出量を制裁委員会に報告する義務がある。

ロシアでタンカーに積み込まれた原油や石油精製品を公海上で別のタンカーに積み替え、北朝鮮に運ぶ「瀬取り」と呼ばれる制裁破りが横行しているが、これと今回のガソリン価格下落との間に、因果関係があるかどうかはわからない。ただ、北朝鮮の人々は経験則で「こっち(中国)が閉じられれば、あっち(ロシア)が開く」(情報筋)と考える人が多いようだ。

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情報筋はまた、中国とロシアは単に利害関係だけで動いているわけではないと見ている。

「国境を接している中国とロシアは、わが国(北朝鮮)とは昔から血で結ばれた関係。北朝鮮の状況が悪くなれば国境が不安定になりえるので、両国とも北朝鮮が倒れるのを見過ごすことはないだろう」(情報筋)

しかし、市民の不安が完全に解消されたわけではない。制裁が強化される前の昨年3月のガソリン価格は8000北朝鮮ウォン(約112円)台だった。そこまで戻さない限り、価格が安定したとは言えないからだ。そもそもの原因である核・ミサイル問題は、なおも現在進行形である。

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情報筋は、「いつまた価格が高騰するかわからないので買いだめ、買い占めする人もいるが、カネがなくとてもそんなことはできないという人が多い。制裁が続く限り、貧しい人々の暮らしは厳しくなるばかりだろう」と語った。