北朝鮮の人々の韓国製品好きは、当局がいかに厳しい取り締まりを行っても止まらないようだ。

北朝鮮の幹部の間では韓国製のチョコマフィンが人気で、中には秘密のルートを使って韓国から取り寄せる人もいる。一方、平壌市内のレストランでは、中国から密かに韓国製の醤油を取り寄せて使っていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:北朝鮮の幹部の間で「チョコマフィン」が大流行

中国の国境都市で韓国食品店を営むオーナーは、RFAの取材に対し「北朝鮮当局の取り締まりが厳しいため、韓国食品の輸出は以前と比べて大幅に減ったが、醤油など調味料の北朝鮮向けの売上はむしろ増えている」と述べた。

中でも人気なのは、韓国M社製の醤油だ。13リットルのポリタンク入りだが、ブランド、会社名、住所、電話番号がデカデカと書かれているため、そのまま北朝鮮に輸出しようとしたら税関で引っかかってしまう。そこでこのスーパーでは、中身を中国製の醤油の容器に入れ替えるサービスを行っているとのことだ。

1本単位で注文する人は少なく、少なくとも5本単位で買い込むのだそうだ。醤油だけではなく、ジャージャー麺やカレーと言った韓国人が好む料理の材料も人気で、いずれもパッケージを中国製のパッケージに替えて北朝鮮に輸出している。

ちなみにこのM社は韓国の醤油3大メーカーの一つだが、会長が運転手に暴行を働き、暴言を吐いていたことが発覚し、ブラック企業として激しい批判にさらされた。会長は謝罪の上で辞任したものの、ブランドイメージが回復せず、赤字に転落しシェアも大幅に減らしてしまった。

北朝鮮に輸出されているのは少量であるため、同社の業績回復に影響するほどではないだろうが、「北朝鮮でも人気」という売り文句が、もしかしたら救世主となるかもしれない。

それにしても、なぜ北朝鮮で韓国の醤油が人気なのだろうか。「韓国製なら何でも高級品」という風潮もあるだろうが、やはり決め手は味だ。

北朝鮮で一般的なプルゴギは、醤油、砂糖、ニンニクなどで作ったタレに漬け込んだ肉を焼いた料理だ。平壌市民によると、中国製や北朝鮮製の醤油は、韓国製ほど味にコクがないため、店で出すと客からの評判が芳しくないようだ。そこで、幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)、外国人が利用する高級レストランはもちろん、背伸びすれば庶民の手にもなんとか届く中級レストランも、韓国製の醤油を使うようになったとのことだ。

北朝鮮の食品工場でも、醤油の生産は行われている。しかしデイリーNK内部情報筋によると、大豆は金正恩党委員長の名前で子どもたちに配るお菓子セットの生産に使用するため、普段使いの醤油の生産に回せないことが多いそうだ。

(参考記事:金正恩氏のお菓子セットが「不味すぎて」発展する北朝鮮の資本主義

そこで、平壌市や平安道(ピョンアンド)、黄海道(ファンヘド)の家庭では、昔ながらの製法で醤油を作っている。甕(かめ)に味噌玉、塩、水を入れて1〜3ヶ月発酵させて作るが、色は淡くても非常にしょっぱい。韓国では、少量をスープに入れて味を整えるのに使う。

煮物などに使うのは、植民地時代に入ってきた日本式の醸造醤油だが、北朝鮮では品薄で手に入らない。その穴を埋めるのが韓国製の醤油というわけだ。

ちなみに「韓国製なら何でもいい」というわけではない。韓国製のコチュジャンは、甘すぎて北朝鮮の消費者の口に合わないそうだ。しかし、北朝鮮製と混ぜることで絶妙な味を生み出し、人気を集めているとのことだ。

(参考記事:北朝鮮で南北コチュジャン「合わせ味噌」が人気…「お口の中の南北統一」