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数十年にわたり北朝鮮を苦しめてきた電力難。この数年で多少の改善が見られたと言われていたが、先月中旬ごろから電力の供給状況が極度に悪化したもようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

最近、中国を訪れた平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)在住の情報筋によると、現地では新年に入ってから電力事情が悪化し、先月中旬からは停電しっぱなしだと伝えた。しかし、問題はそれだけではない。

「電気は来なくてもソーラーパネルで解決できるが、問題は水道が全く使えないことだ」(情報筋)

停電でポンプの稼働が止まっているため、断水しているということらしい。去年までは、中国から密輸されたミネラルウォーターを飲水としていたが、中国税関当局の密輸取り締まり強化で、供給が止まってしまった。

そのため、マンションに住む住民は、ただでさえ新年恒例の堆肥戦闘(肥料用の人糞集め)でクタクタになっているというのに、地上の井戸で水を汲み自宅まで運ぶという重労働に苦しめられている。

(参考記事:過酷な「人糞集め」に苦しむ北朝鮮国民を襲うもうひとつの災い

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地方より優遇されている首都・平壌ですら、「中心部を除き1日に2〜3時間しか電気の供給が行われていない」(平壌在住の華僑)とのことだ。また、断水しているため、家族総出で水の確保にてんてこ舞いすることになる。

情報筋は、北朝鮮の電力政策の問題点を次のように指摘している。

「当局は水力発電所を作り続けているが、電気の生産を水力にばかり依存し続けると、冬季の電力難は永遠に解決できない」

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北朝鮮には、完成当時には東洋最大と言われた水豊(スプン)ダムが存在する。かつてはこのダムで、北朝鮮の電力需要の一定以上を賄えていたが、その「成功体験」が同国の電力政策を狂わせてしまった。

朝鮮戦争後の復興が進むにつれ、電力の需要は飛躍的に伸びた。さらに金日成主席は、鉄道の電化事業を進めた。徐々にひっ迫する電力供給を補うために建設に力を入れたのが、水力発電所だった。しかし、朝鮮半島は降雨量が少なく水力発電には適していない。そうこうしているうちに、頼みの水豊ダムは設備の老朽化で発電量が減ってしまった。1990年代までに、頼みの綱の共産圏からの援助も途絶えた。かくして深刻な電力難が北朝鮮を襲った。

当局は1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころ、電力難解消のために、「水の流れるところすべてに中小型水力発電所を建設せよ」との指示を下した。それに基づき、4000もの水力発電所が作られた。しかし焼け石に水で、全く役にたたかなかった。

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鉄道は、頻繁な停電のため停車を繰り返し、平壌から恵山(ヘサン)までの720キロを約23時間で結ぶはずの列車が、10日以上かかるような事態となってしまった。

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それなのに、金正恩氏が推し進めたのはさらなる水力発電所の建設だ。2015年には白頭山(ペクトゥサン)英雄青年発電所、煕川(ヒチョン)9号発電所、2016年には礼城江(レソンガン)4号発電所、2017年には礼城江3号発電所を相次いで完成させた。

しかし、費用の割には発電量が少なく、北朝鮮お得意の「速度戦」で作ったために、水漏れ事故を起こしたり稼働ができなかったりと、散々な結果をもたらした。

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金正恩氏は今年の新年の辞で、「火力発電による電力生産を画期的に増やし、不備な発電設備を整備、補強して電力の損失を減らすとともに、最大限に増産するために奮闘すべきです」と、火力発電に重点を置く方針を示しているが、同時に次のようなことも言っている。

「既存の中小の水力発電所で電力生産を正常化して地方工業部門の電力を自力で保障すべきです」

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、この新年の辞を受けて、当局はかつて全国に作った中小型発電所を復活させるための調査を進めているが、道内にある131の発電所のうち、100ヶ所ほどが洪水などに流されて、残ったのは30ほどに過ぎない。いずれも、発電量が500キロワット以下で役に立たなかったため、2004年に整理(廃止)されたものだ。

幹部は「今更あんな発電所を復活させろと言われても、何をどうすればいいのかわからない」と困り果てているという。