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「貨幣改革が行われるかもしれない」――そんな噂が北朝鮮を駆け巡り、人々は恐怖に震えている。

貨幣改革とは2009年11月に行われたデノミネーションのことを指す。北朝鮮当局は当時、通貨単位を100分の1にして、旧紙幣を新紙幣に交換する措置を取った。しかし、そのやり方がまずかった。

持っている旧紙幣をいったん銀行に預け、新紙幣で引き出す形を取ったのだが、引き出し制限を旧紙幣の単位で10万北朝鮮ウォンに制限したのだ。これは、なしくずし的に進む市場経済化で、民間に富が蓄積することを嫌った故金正日総書記が、市場経済を潰し、国家主導型の計画経済に戻すことを目論んだものだった。

だが、これにより北朝鮮は大混乱に陥った。

当時の北朝鮮の人々の平均資産額は1人あたり100万北朝鮮ウォンだったと言われており、財産の9割が紙くずになってしまうことを意味していた。品物の買い占めに走る者もいれば、旧紙幣を燃やす者もいた。一部では暴動が起きるなどした。

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これに慌てた北朝鮮政府は、交換の上限枠を増やしたり、賃上げしたりなど様々な措置を取ったが、混乱は収まらず、当時の金英日(キム・ヨンイル)内閣総理が、平壌市内の人民班長(町内会長)が集まった席で謝罪するほどだった。

閉鎖されていた市場を再開し、外貨使用禁止令を解き、貨幣改革の責任者だった朴南基(パク・ナムギ)朝鮮労働党計画財政部長ら100人が銃殺刑に処され、ようやく混乱が収まったが、その影響は長年にわたり北朝鮮経済に暗い影を落とした。

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北朝鮮国民共通のトラウマである貨幣改革がまた行われるとの噂が、11月初旬から住民の間で流れていると、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

粛川(スクチョン)の農場は、秋の収穫後の決算分配で、例年の現物ではなく、現金を農民に支払った。かなりの額となったが、昨今の物価高騰に対応できるほどの額ではなく、農民の間から不満の声が上がった。

この話を根拠にして、貨幣改革の噂が広まった。

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「2009年の貨幣改革の前に、農民は穀物でなく現金で分配を受け取った」

当時の農民は、今まで見たことのないほど多額の現金を受け取り、大喜びしたが、それもつかの間、貨幣改革で受け取った現金のほとんどが紙くずになってしまったのだ。

今現在の経済状況も、2009年当時に似ていると情報筋は述べた。

「あの当時も、多くの現金が流通したことで、急激に物価が上昇し、北朝鮮ウォンの価値が暴落したが、今もちょうどそのような状況だ」

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北朝鮮ウォンの闇レートは、今年5月26日に1ドル(当日のレートは約157円)8920ウォンだったが、その後急速にウォン安が進み、6月9日には1万2100ウォン、同月23日には1万4200ウォン、そして9月2日には1万6500ウォン、11月10日には1万8100ウォンを記録した。

なお、毎日新聞は中朝貿易関係者の話として、今月20日の時点で新義州(シニジュ)で1ドル3万2000ウォンを記録したと報じた。

当局は、貨幣改革の噂を流言蜚語(デマ)だと一蹴し、社会に混乱をもたらす利敵行為だと警告し、噂を口にした者、広げた者を強く処罰する方針を示した。また、情報員(スパイ)を住民の中に送り込み、これらの発言が行われないか監視体制を強化している。

上述の粛川の農場で、「昔も分配金を大量に支払い物価が上昇し、通過の価値が下落して貨幣改革が始まった、カネがすべて紙くずになったが、今のあの時と同じ状況」と発言した農民が摘発され、3カ月の労働鍛錬刑(懲役刑)を判決を受けた。

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また、平城(ピョンソン)の市場では22日、貨幣改革の話をしていた商人たちが、市場管理員から次のように警告を受けた。

「こんな時になぜそんなくだらない話をしているのか。貨幣改革が始まると口を滑らせて銃殺されたやつがいるという噂を聞いていないのか。市場から追い出されたくなければ、そんなことは二度と言うな」

上述の毎日新聞の記事は、北朝鮮の貿易関係者の話として今年9月、「年内に貨幣改革がある」とデマを流した人が銃殺刑にされたと報じたが、市場管理員が話したものがこれと同一事案なのかは不明だ。

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だが、それでも貨幣改革の噂は収まらない。

「商売人たちは、とどまることをしらないウォン安と物価高騰のせいで、物が売れても儲けがないので、本当に貨幣改革をやるのではないかと話している。大っぴらに話はできなくとも、皆がそのように考えているようだ」(情報筋)