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昨年1月の国境封鎖、貿易停止以降、深刻な経済難に襲われている北朝鮮。市場での商売もあがったりで、なけなしの家財道具を売り払い、食べ物を手に入れていたが、ついに売るものがなくなった人々は、家を売り払って現金化している。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、貧困が深刻化する一方の北朝鮮の現状を伝えている。

平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)の情報筋は、初冬が訪れた現地で、食べ物を手に入れるために家を売りに出す人が増えていると伝えた。売り物件が増えたことで不動産価格が下落しているが、これをチャンスと見たトンジュ(金主、新興富裕層)は、次々に買い入れているとのことだ。

北朝鮮ですべての住宅は国の所有となっており、本来は売買が禁じられているが、入舎証(居住証明書)を取引する形での不動産市場が形成されている。当局は今まで黙認していた不動産の売買を明確に禁止する行政処罰法の改正を昨年行ったが、これは今回のように貧困層が家を売り払ったり、借金のカタに奪われたりする行為が頻発していることから、これを防ぐという目的もあるものと思われる。

しかし、依然として市人民委員会(市役所)の都市経営課の担当者にワイロを渡して、入舎証を受け取る行為が横行しており、カネとコネさえあればいくらでも不動産売買ができる状態というのが情報筋の説明だ。

(参考記事:北朝鮮、不動産取引を禁止…違反なら懲役刑も

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情報筋は、貧困層のみならず、富裕層も経済的困窮から家を売りに出していると伝えた。

その例として挙げたのは、中国との国境を流れる鴨緑江沿いに建てられた、金日成主席を象徴する太陽をかたどった楕円形の高層マンションだ。電力不足でエレベーターが使えず、階段を使って上り下りしなければならず、水が出ないことでトイレも使えないため、暮らしにくいと悪評が立っている。

(参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出

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またこのマンションには、中国との貿易で儲けていた人が多数入居していたが、コロナ鎖国で2年近く貿易ができなくなり、経済的に困窮したことから、部屋を売りに出す人が増えている。

買値を下回る価格でもいいから売り払って、郊外の平屋建ての住宅に引っ越そうという人が少なくないが、実際に価格が急落。元々1戸3万元(約53万2000円)で取り引きされていたが、最近ではその半額以下になっているとのことだ。

(参考記事:「金日成印」のタワマンが北朝鮮富裕層からそっぽを向かれる理由

現地の別の情報筋も、最近になって異常と言えるほど不動産取引が活発になっているとし、高層階に住んでいた人が同じマンションの低層階の部屋を買って引っ越す現象が起きていると伝えた。北朝鮮では、盗難の被害が少なく、停電時にも不便が少ないという理由で、高層階より5階前後の低層階が人気だ。低層階に住んでいた人が経済的に困窮し、部屋を売りに出して、より安い高層階に移り住む現象も同時に起きているとのことだ。

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冬を迎えて困窮する人が増えている理由について情報筋は、燃料費を挙げた。冬の寒さの厳しい北朝鮮では、暖房用の燃料費がかなりの出費となるが、新しいマンションの場合は、高価なガスや電気での暖房となる。一方、郊外の平屋や古いマンションなら、練炭での暖房が可能で、燃料費が抑えられるメリットがある。

(参考記事:氷点下17.2度、極寒の北朝鮮で暖房なし…究極の耐乏生活

家が売れたらマシな方で、売りに出しても買いがつかなかった場合には、家を放棄して他の地域に去ってしまう人もいるとのことだ。今まで、農村から都会に出稼ぎに出る人が少なくなかったが、もはや都会で暮らしていけなくなり、畑を耕せば日々の糧を得られる農村に逆流する現象が起きているということだろう。

(参考記事:北朝鮮の国営企業「無断欠勤」従業員の連れ戻しに必死