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北朝鮮は今年1月、中国での新型コロナの感染拡大を受け、他国に先駆けて国境を封鎖する措置を取った。これと同時に外国人観光客の受け入れも停止した。

国際社会の制裁による恒常的な外貨不足に悩まされている北朝鮮にとって、観光収入は非常に貴重なものだ。それを停止するとは、感染が拡大した場合にそれに対応できる態勢がなく、国が崩壊しかねないという強い危機感が如実に表れた例と言えよう。

(参考記事:北朝鮮、22日から外国人観光客の受け入れを一時中止

だが、ここにきてようやく観光再開の動きが出つつある。

デイリーNKの対北朝鮮筋は、北朝鮮と中国が来月30日から国際列車の運行と、中国人観光客の受け入れを再開することで合意したと伝えた。

再開に向けては中朝間で水面下での接触が行われてきたと伝えられているが、中国側が先に提案したというのが情報筋の証言だ。

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「資金援助せずに北朝鮮を助けるための方策だ」(情報筋)

国連安保理の制裁に違反するため、中国政府や企業が直接支援に乗り出すことはできないが、建前上は政府を介さない観光業で北朝鮮を支援しようというものだ。

(参考記事:北朝鮮ツアー、北朝鮮旅行は今後どうなる…実は近くて普通に行けるおすすめ北朝鮮ツアー・北朝鮮旅行

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中国は、朝鮮戦争の参戦70周年を記念して「中国人民支援軍抗美援朝作戦70周年記念大会」を開催、国営メディアで特集番組が放送され、北朝鮮と面する遼寧省丹東では、参戦に関する展示のある「抗美援朝記念館」が6年ぶりに再オープンした。

また、22日付の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、金正恩党委員長が平安南道(ピョンアンナムド)の檜倉(フェチャン)にある中国人民支援軍烈士陵園を訪問したことを報じた。米中貿易摩擦が深刻化する中、「共通の敵」である米国に、中朝の「血で固めた友誼」とも形容される中朝の友好関係をアピールする狙いがあると思われる。今回の観光客受け入れ再開もその一環だろう。

ただ、実際に再開の運びとなるかどうかは、新型コロナウイルスの感染状況次第だ。

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情報筋は「運行再開を来月末にした理由は、コロナの拡散状況を1ヶ月程度見守るため」として、もし感染が再度拡大するような状況となれば、再開が延期される可能性があると述べた。

中国では第1波の収まった今年3月中旬以降、1日の感染者数が概ね2桁台にとどまっているものの、コロナがくすぶり続けている状態だ。一方の北朝鮮は、コロナ感染者の発生を公式に認めてはいないが、疑われる事例が各地で発生している。

北朝鮮は、健康確認書の提示を条件に中国人観光客を受け入れる用意があると中国側に伝えたものの、最近12人の感染者が出た山東省青島の居住者、滞在者は無条件で排除すると通知し、中国側もこれを受諾する回答を示したと情報筋は伝えた。青島市は1000万人近い市民全員に対して検査を実施したが、新たな感染者は見つからなかった。北朝鮮から遠くななれた新疆ウイグル自治区のカシュガルでも138人の感染者が発生している。

(参考記事:コロナだけではない北朝鮮国民を苦しめる伝染病

また、列車は定員の3分の1に抑えて防疫を強化し、観光地としては平壌と金剛山(クムガンサン)の2ヶ所に限って先行して受け入れるとのことだ。もともと、北朝鮮旅行はツアー形式で行われ、北朝鮮国民と観光客の接触を最低限に抑える形を取っているため、この点のハードルは高くないだろう。

また、両国はクレジットカードやキャッシュレス決済の使えない北朝鮮に限り、外貨持ち出しの制限額を撤廃することで合意したと情報筋は伝えた。中国には、通常は人民元なら2万元(約31万4000円)、外貨なら5000ドル(約52万4000円)相当額という持ち出し制限があるが、これを撤廃することで北朝鮮でカネを落とさせ、側面から経済支援を行う思惑があるものと思われる。

近年、日本や韓国を訪れた中国人観光客が「バラマキみやげ」を大量購入する光景がよく見かけられたが、北朝鮮にはおみやげ品の選択の幅が狭く、魅力的な商品も少ないことを考えると、思惑通りにはならない可能性が高い。

(参考記事:コロナ後の「観光ビジネス」に賭ける金正恩…受け入れは2021年末か