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度重なる自然災害に襲われた今年の北朝鮮では、食糧生産量の著しい減少が見込まれている。各地の協同農場では、コメを確保しようとする軍と、渡すまいとする農民の間でトラブルが多発している。

(参考記事:兵士が農民に銃を向けて…北朝鮮「食糧争奪」で分裂の危機

商人は、遠隔地の協同農場でコメを買い付けて、都会の市場に供給しているが、当局は昨年に続きこのような行為を禁止し、取り締まりに乗り出した。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、今年9月に台風13号(レンレン)が北朝鮮を襲った後に、当局は「個人食糧流通行為を処罰する」という布告を出した。

かつて、コメなどの穀物は国の配給によって国民に届けられていたが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を前後して配給システムが崩壊。それ以降は、市場で購入するようになったが、これを国主導の流通システムに戻そうとしているものと思われる。その一環として今回、穀物流通禁止令を出したようだ。

(参考記事:北朝鮮国民が「国がなぜ人民にコメを売りつけるのか」と怒るワケ

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現在の北朝鮮は、まるでヤミ米の取り締まりを行っていた終戦直後の日本のような様相を呈している。列車内での取り締まりに加え、大きな市場のある平城(ピョンソン)、順川(スンチョン)などには、駅前に検問所まで設置して、周囲にパトロール隊を配置するほどの厳しさだ。

商人らは、鉄道職員や保安署(警察署)の関係者を買収し、貨物列車のコンテナを貸し切ってコメを運搬しているが、「穀物流通を根絶せよ」という2回目、3回目の方針(命令)が下され状況はさらに悪化。せっかく買い付けたコメを没収される事態が続発している。そこで、商人が編み出したのは、こんなやり方だ。

卸売業者6人は先月、平安南道の順川から价川(ケチョン)までの40キロの道のりを、貨物列車のコンテナを借りて、コメとトウモロコシを運んでいた。列車は价川駅に到着したが、駅周辺は取締官だらけで荷降ろしをすればすぐに摘発されてしまう。

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そこで、荷降ろしせずコメは列車に乗せたままにした。やがて列車は出発。次の院里(ウォンリ)駅を通過し、鳳泉(ポンチョン)駅に進入する直前で、商人らは、コメが入った麻袋を列車から投げ落とした。そして、トラックをチャーターし鳳泉から价川まで運ぶことで、無事に取り締まりの目をかいくぐることに成功した。しかし、その距離は10キロ。余計な費用がかかったと商人たちは嘆いていると情報筋は伝えた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も、農村から貨物列車に載せて運んできたトウモロコシを金策(キムチェク)駅で降ろせず、次の駅との間に投げ落とし、また市内まで運んで戻すという非常に面倒な作業を強いられたと伝えている。

目的地まで届けると約束していた鉄道職員だが、取り締まり班がやってくれば追及を逃れるために知らんぷりをするという。

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このような取り締まりを行っているが、当局が穀物流通をコントロールするのは難しいだろう。配給でコメをもらえなくなった住民は、市場で買って食べている。国が全量を持ち去ったとすれば、食糧不足が起き、物価全体が上がってしまう。それは、国民の強い不満へと繋がる。