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北朝鮮の北部山間地域にある慈江道(チャガンド)の教化所(刑務所)で今月初め、受刑者2人が看守の人権侵害行為に抗議してハンストを行った。これに対して教化所当局は、2人を独房に閉じ込め、8月から始まる大赦(赦免)の対象から除外する措置を取った。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、事件が起きたのは道内の城干(ソンガン)教化所だ。

軍需工場に勤めていた労働者2人は2015年3月、勤め先からアルミ板などの軍需資材を横流しした容疑で、工場の保衛隊(秘密警察)に摘発された。

横流しは、まともな給料がもらえない北朝鮮の労働者、幹部が常習的に行っているものだ。通常は関係各所にワイロを渡してもみ消すものだが、何らかの問題が生じ、運悪く摘発されてしまったのだろう。

(参考記事:ダーティマネーが飛び交う北朝鮮の熾烈な「肥料争奪戦」

2人には裁判で、軍需工業破壊罪で5年の労働教化刑(懲役刑)が言い渡され、同年9月に城干教化所の第6教化所に収監された。軍需機密を知る受刑者を収監する、特殊な教化所だ。

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2人を待ち構えていたのは、戒護責任者(看守長)の30代男性チェ某だった。チェは2人に対して暴行と暴言を繰り返した。それに耐えかねた2人は、行動を起こした。

「2人は自分たちのみならず、他の受刑者が直面した無念さ(人権侵害)をチェの上官である教化1課長と教化所副所長に伝え、『教化所内の間違った部分を是正して欲しい』と要求したが、『告げ口した』との理由でチェからさらにひどい待遇を受けることになった」(情報筋)

チェは部下の看守に命じ、2人に辛い仕事ばかり与えるなどの報復を行った。それに耐えかねた2人は「こんな風に生きるのなら死んだほうがマシだ」と今月初め、3日間のハンストに入った。

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かつてと比べ、北朝鮮の食糧事情は大幅に改善しているが、教化所などの拘禁施設ではまともな食糧配給が行われていない。受刑者は、家族からの差し入れなしでは生き残れない。本人はもちろん、家族も苦痛を強いられているのだ。そんな状況でのハンストは命がけだ。

(参考記事:北朝鮮の刑務所「教化所」の実態(2)

報告を受けた教化所当局は反省するどころか、「ハンストはわが共和国(北朝鮮)の憲法を否定し、党に対する全面的な挑戦行為だ」とし、2人に対して10日間の懲罰房(独房)入りを命じ、食べ物をホースで口に流し込み、無理やり食べさせた。つまり、高級食材のフォアグラを作るために喉の奥までホースを入れられ、強制的にを流し込まれるアヒルのような目に遭わされたわけだ。

そればかりではない。

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「国家と人民を前にして拭いきれぬ罪を犯しながら、深く反省して罪を償うどころかハンストで反抗したという理由で、8月の大赦リストから除外されてしまった」(情報筋)

北朝鮮の最高人民会議常任委員会は12日、建国70周年に際して8月1日から大赦を実施することに関する政令を発した。咸鏡道(ハムギョンド)の情報筋によると、管理所(政治犯収容所)を除くすべての教化所(刑務所)に収監されている受刑者に対して一律3年の減刑を行うというものだが、2人はそれから除外されたのだ。

(参考記事:「政治犯以外は3年減刑」北朝鮮で高まる「大赦」への期待

ただ、2人がすぐに殺されなかっただけでも、以前と比べれば変化があったと言えるかもしれない。1987年に咸鏡北道(ハムギョンブクト)の穏城(オンソン)政治犯収容所で、幹部の横暴に怒った受刑者が暴動を起こしたが、軍に無差別射撃を加えられ虐殺されている。今もし、このような虐殺を行えば、たちまち国際社会の知るところとなり、「正常国家」を目指す北朝鮮の野望は断ち切られることになるだろう。

(参考記事:繰り返された「抵抗」と「虐殺」…北朝鮮の血塗られた69年史