北朝鮮では1980年代まで、食料品から住宅に至るまですべてのものを配給するシステムが機能していた。ところが、北朝鮮を援助していた共産圏が崩壊し、非科学的なチュチェ農法などで穀物生産量が激減したことに加え、相次ぐ自然災害で配給ができなくなってしまった。
やがて北朝鮮は未曾有の食糧危機「苦難の行軍」に襲われた。何でもかんでも配給でもらえることに慣れきっていた北朝鮮の人びとは、自分の力で食べ物を得る方法を知らず、次々と餓死していた。生き残った人びとは、市場で商品を売買することを体得した。
北朝鮮の人びとにとって国という存在は、自分たちを生かせてくれるありがたいものではなく、自分たちを抑えつけカネをむしり取る邪魔者でしかないのだ。国営メディアがいくら金正恩党委員長のプロパガンダを行っても、何の効果もないというわけだ。