いまのところ、脱北者や北朝鮮ウォッチャーの中に、「拷問を加えた」と見る向きは見当たらない。しかしいずれにせよ、ワームビア氏を罪とも言えない罪で拘束し、その間に彼の身に起きた異変により死なせた事実に変わりはないのだ。
北朝鮮が米国の世論を鎮めたいと思えば、せめて過失を認め、賠償に応じるなどの行動が必要になる。しかしそうすると、それが人権侵害を認めた前例となり、人権問題追及の動きに勢いを与えることになる。
(参考記事:北朝鮮「女性虐待収容所」を拡張…米人権団体が告発)たとえば、北朝鮮は1968年、米海軍の情報収集船「プエブロ号」を拿捕したことがあるが、当時の乗組員が「11か月間にわたって拷問され、後遺症に苦しんだ」と提訴。ワシントン連邦地裁が2008年暮れ、北朝鮮政府に賠償金6600万ドル(約60億円)の支払いを命じる判決を下したことがある。