たしかに、このように整理し得る流れがなくはなかった。だが、どうにも苦しい点がひとつある。死亡した(殺された)のはあくまで旅券名義のキム・チョルなる男性であり、金正男氏は「別の名前の人物」としている部分だ。
死亡したのが正男氏でないと言いたいのなら、「別人」と書けば済むことだ。そう書けないのは、「死んだ人は金正男ではない」と言い切るのがはばかられるからだろう。
ちなみに、朝鮮新報が同事件の呼称として用いているのは「クアラルンプール事件」であり、複数ある解説記事の中に、「死んだのは金正男ではない」と言い切っているものは一本もない。