スイス・ジュネーブで10日、「保護されず、搾取される北朝鮮の女性と子供たち」を主題とした討論会が開かれた。

13日からの第34回国連人権理事会に先立ち、複数の人権NGOによる並行行事として行われたもので、トーマス・キンタナ北朝鮮人権特別報告者や、北朝鮮人権責任者の処罰に関する独立専門家団メンバーのソーニャ・ビセルコ氏も参加。今後の同理事会における議論を先導する形で話し合いが持たれたもようだ。

人身売買の被害も

討論会について報じた米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、基調演説を行った韓国のNGO「成功的な統一を作る人々」のキム・ヨンイル代表は、次のように語っている。

「これまで北朝鮮の人権問題と言えば、公開処刑や政治犯収容所などの極端な事例が優先的に論じられてきたが、今回はより細かい問題について論じられた。たとえば北朝鮮の法律では16歳未満の労働は禁じられているのに、14歳以上の子供たちは春や秋になると、農場で1カ月以上も当たり前のように労働を強いられている。北朝鮮が法治国家と言えないのは周知の通りではあるが、彼らが作った法を、彼ら自らが踏みにじっている事実は重要だと言えるでしょう」

このような実態については、デイリーNKも繰り返し伝えてきたところだ。

他方、米国の人権団体・北朝鮮自由連合の「北朝鮮女性実務グループ」は今月、ニューヨークの国連本部で第61回国連女性の地位委員会が開催されるのに合わせ、中国における北朝鮮女性の人身売買被害の実態について告発していくという。

貧困から逃れるために、国境の川を渡って脱北し、中国人男性と結婚する北朝鮮女性は少なくない。幸せに暮らしている人もいる一方で、人身売買の犠牲になり、現地で虐待に遭ったりする女性が後を絶たないのだ。

こうした人権NGOの同時多発的な攻勢が、メンバー間の人的交流を経由した共通の問題意識の下で行われているのは言うまでもない。

北朝鮮の金正恩党委員長は核兵器と弾道ミサイル開発の進展に気を良くしてか、異母兄である金正男(キム・ジョンナム)氏殺害に似られるように傍若無人の度を増しているように見受けられる。しかし、いかに核で威嚇しようとも、人権問題の追及だけは止むことはないだろう。

この世界において、正恩氏がわが身の安泰を図れる場所に確実に狭まっているのである。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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