ソウル市内の中心部では、2015年5月から国連の北朝鮮人権事務所が居を構えている。「ポスト金正恩」を見据え、人権侵害の下手人を裁くための客観的な資料を日々集めている。国際社会のこうした努力に加え、韓国政府やNGOが蓄積してきた人権侵害の記録により、金正恩氏への包囲網は確実に狭まっている。
現に、金正恩氏が一番触れてほしくない内容が人権であることは、国連での北朝鮮側のヒステリックな反応をみても一目瞭然である。
金正恩氏は、人権侵害に対して明確に責任を負わなければならない。金正日総書記の死去からすでに5年以上が経つ。人権侵害は「祖父の代からの負の遺産」という言い逃れはもはや通じないのである。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。