その秘密とは実母である高ヨンヒ氏の存在だ。
金日成氏の母親・康盤石(カン・バンソク)氏や金正日氏の母親・金正淑(キム・ジョンスク)氏の誕生日は、それぞれ4月21日と12月24日だ。祝日ではないが二人の生誕記念日にちなんで、なんらかの記念行事が行われたり、国営メディアで言及されることが多い。
しかし、高ヨンヒ氏に関しては誕生日どころかその存在すら明らかにされていない。彼女が元在日朝鮮人の帰国者だからだ。金正恩体制は、三代世襲を正当化するために、金日成氏を始祖とする抗日パルチザン一族の「白頭の血統」を継いでいかなければならないと主張している。そこに、抗日パルチザンの敵である日本生まれの元在日朝鮮人の血が混じることなどあってはならないことなのだ。
(参考記事:金正恩と大阪を結ぶ奇しき血脈(1)すべては帰国運動からはじまった)実に選民思想的で、かつ差別・排他的な発想だが、これが金正恩体制のアイデンティティーなのだ。