しかし昨年、北朝鮮北東部を襲った大洪水でその村々は消え、当局は遠く離れた山裾に新たな村を作った。また、新しい住宅には塀がなく、誰が出入りしているか丸見えだ。川に沿って幅広の警備道路が作られ、鉄条網が整備され、監視カメラまで設置されたら、アリの這い出る隙もなくなってしまう。
また、中国当局も北朝鮮当局に協力し、国内に潜伏する脱北者の摘発と強制送還にいっそう力を入れているとされる。
韓国入りした脱北者数増加のデータとは裏腹に、北朝鮮の人々が自由な暮らしにアクセスする経路は、むしろ細っていると言えるかもしれない。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。