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北朝鮮が大飢饉「苦難の行軍」の真っ只中にあった1997年。咸鏡北道(ハムギョンブクト)の穏城(オンソン)に住んでいたカンさん一家は、餓死の危機に瀕していた。父は家族の窮状を救うため、一人で国境を越えて中国に出稼ぎに行った。

ある日、国境の川を見つめていて、家族のことを思い出した。そして、なけなしのカネをはたいてごちそうを買い、家族のもとに向かおうとした。ところが、川を渡りきったところで、摘発されてしまったのだ。

「この国に未来はない」

教化所(刑務所)に送られ、劣悪な環境と強制労働で体を壊してしまった父。母が刑務官に「しばらくの間、外に出してやってくれないか。1〜2週間で家で休ませて体力が回復したら戻らせるから」と頼み込み、ワイロを掴ませて、父を教化所から連れ戻した。