とはいえ、金正恩氏が先軍政治、つまり武闘派路線を捨てたわけではない。正恩氏はこの5年間で3度の核実験を強行した。今年は2度の核実験を強行し21発の弾道ミサイルと3発の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の試射を行った。金正日総書記が17年間の執権時代に行った核実験は2度で、発射した弾道ミサイルの数は16発だった。
金正恩氏は自身を絶対的頂点とした軍政を完成させながら、父・正日氏の先軍政治を超えようとしているのかもしれない。それはとりもなおさず、正恩氏の暴走が加速することを意味する。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。