北朝鮮の金正恩党委員長は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の第380大連合部隊の視察を行なったと、先月25日の朝鮮中央通信が報じた。

自分の所属部隊が最高司令官である金正恩氏を迎えることは指揮官はもちろん、末端の兵士にとっても、本来なら非常に名誉であるはずだ。しかし、どういうわけか現場の士気はむしろ下がっていると両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝える。

北朝鮮軍では既に毎年恒例の「冬季訓練」がはじまっている。数ヶ月続く厳しい訓練だけあって、開始前にはごちそうが出されることが恒例となっていた。

ところが、第380大連合部隊の区分隊(中隊、または小隊に相当)の食卓に上がったのは少量のご飯と、豚肉の入ったスープだけで期待はずれだったという。

一方、同じ第380大連合部隊でも、金正恩氏が訪れた指揮部所属の兵士には、特別配給が与えられ、家族と共にごちそうに舌鼓を打った。この話を聞いた他の区分隊の兵士たちは、あまりにもの待遇が違いすぎることに落胆しきっているという。

「食い物の恨み」で士気が上がり下がりするほど、北朝鮮軍の食糧事情は悪い。北朝鮮国内の食糧事情は、好転しつつあるというのが概ねの見方だが、その例外が軍隊だ。

金正恩氏は「兵士の生活を改善させよ」との指示を何度も出している。それに従って当局が食糧を各地の軍部隊に送っても、輸送過程で多くが横流しされてしまい、末端の兵士のもとに届くころには、量が目減りしてしまっているのだ。

腹を空かせた兵士たちは、協同農場や民家を襲い、食糧を強奪する。中には、国境を越えて中国で強盗を働く者すらいる。訓練そっちのけで、山菜採りに行かされることもある。「米帝と南朝鮮傀儡一味との戦争」ではなく、「飢えとの戦争」を強いられているのだ。

当然のことながら、士気は低下し、脱走が頻発している。その数は、韓国軍当局が把握しただけでも、2015年の1年間で70人に及ぶ。

兵士たちは「南朝鮮傀儡軍(韓国軍)は食べるものがなくて、米軍の残飯をあさっていると言うが、われわれより体格もよく、背も高く見える」「こんなことで最後の勝利はできるのだろうか」などと、遠回しに上部を批判している。

軍官(将校)の中には、一般兵士の心情を理解し、物資供給問題の解決を訴える者もいるが、当局は「自強力精神」を強調し、独自で解決せよと問題を放置している。

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