もちろん、米在住脱北者らが追放され、いきなり北朝鮮に強制送還されることはありえない。脱北者が送還されれば、せい惨な人権侵害が常態化している代表的な施設の一つに送られる。こうした事実は既に知られており、国際社会も黙ってはいないだろう。
(参考記事:北朝鮮の「暴行・性的拷問・水責め」を韓国が告発)それでも、米国在住の脱北者たちが厳しい環境にさらされることを喜ぶ人物がいるかもしれない。北朝鮮の金正恩党委員長だ。なにしろ脱北者は北朝鮮を捨てた最大の「裏切り者」だからだ。正恩氏が、トランプ氏の不法移民追放公言に米国在住脱北者が怯えている状況を知れば、溜飲を下げるかもしれない。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。