そうでなくても、正恩氏にとって12月は金正日氏が逝去し、金正恩体制が発足した特別な月である。彼の最初で最大の実績といえる長距離弾道ミサイル銀河3号の発射が成功したのも2012年12月12日だ。
今回の「革命の聖地」巡礼をきっかけに、またもや新たな粛清劇がはじまるのだろうか。それとも米韓をはじめとする国際社会にむけて何らかの挑発をしかけるのだろうか。そうでなくても「崔順実ゲート」をめぐり朴槿恵政権は混乱し、米国ではドナルド・トランプ氏が大統領に当選するなど、北朝鮮が最も対立する両国の今後の対北政策は未知数だ。
金正恩氏が、革命の聖地であり恐怖政治の故郷でもある三池淵郡を訪れたのは極めて不気味であり、次の一手が注目される。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。