このような保衛部の「荒らし」によって、恵山市内の密輸業者は「壊滅に近い」(パク氏)打撃を受け、密輸業者の多くは別の商売に乗り換えたという。

保衛部将校出身で内部の事情に詳しい、脱北者のチョン氏(2011年脱北、仮名・40代男性)はこうした保衛部の変容に、「以前では考えられなかったことだ」と憤慨する。かつては、「保衛部の『金儲け』といえば、罪を見逃す代わりにワイロを受け取るだけ」というプライド(?)と、他の機関の食い扶持に「配慮」する余裕があった。

もっとも、給料もロクに出ない保衛部員の暮らしぶりは、裕福な商売人と比べると天と地ほどの差がある。市場経済化が進む最近の北朝鮮において、現金収入をいかに得るかは誰にとっても死活問題だ。