そしてその過程で、商売はしだいにシステム化してきた。特に流通面の進化が著しい。買い付けた品物を軒先に並べていただけだったものが、仲介業者が生まれ、品物を配達してくれるようになった。お金さえあれば電話一本で、韓国のテレビで宣伝している品物を北朝鮮まで取り寄せられるまでになった。
皮肉なことに、こうしたシステム化のあおりを庶民が受けている。今や「トンジュ(金主)」と呼ばれる10万ドル以上の大きな資本を動かす商売人が「おいしい商売」や「流通」を独占することとなった。日銭を稼ぐ庶民に残されたのは、実入りの少ない商売ばかりだ。デイリーNKの記者たちも「一種類の商売では食べていけない」という声をよく耳にしている。カネがカネを生む資本主義は、北朝鮮でも例外ではない。
そんな状況の中で、現金をガッポリ稼ぎたい庶民の最後のより所となっている商売が「麻薬の密売」だ。北朝鮮で麻薬といえば「ヒロポン」、つまりは化学的に合成されたメタンフェタミンを指す。「オルム(氷)」や「ピンドゥ(氷毒)」といった隠語でも呼ばれ、金持ちから庶民、老若男女に蔓延している。