つまり、こうした国情院の“工作”は、米国が偵察衛星情報をシャッター・コントロールすることで、日本の対北政策を左右しているのと同様のものなのだ。
日本の対北情報のプロたちが、N機関を通じた国情院の情報工作に翻弄されなかったのは、彼らが蓄積してきた情報とノウハウ、それに情報マンとしての矜持があったためだろう。一方で、海保の期待を一身に集めたエリートNが、たやすく国情院に籠絡され、対北情報のプロたちから“N情報”と嘲笑されるようになったのは、なぜか。
警察庁への吸収まで検討され、イージス艦1隻分の予算しか与えられていない弱小官庁の海保が、最後発の情報機関を生み出したために、その期待を一身に背負ったNが禁断の果実に手を出してしまった。これが、直接の原因であることは確かだろう。
だが、本当にそれだけなのか。