米国大統領選挙前後に北朝鮮が核実験、ミサイル発射などの軍事的挑発行動に出るという見方は、幸いにして外れた。金正恩党委員長が国内外の情勢を考慮し、挑発よりも、まずは様子見する方がいいと判断したものとみられる。

また、「崔順実ゲート」による韓国の政局が混乱を好材料と判断し、米大統領選挙ではなく、「南南葛藤」(韓国国内の政治、社会の対立)を煽る方に注力しているとの見方もある。

国連安保理での制裁決議を主導するなど、北朝鮮に対して強硬策を取ってきた朴槿恵大統領だが、「崔順実ゲート」で辞任を求める声が湧き出し、窮地に追い込まれているからだ。

こうした情勢のなか、北朝鮮は機会が熟した状況で軍事的な挑発を行えば、韓国の安全保障への不安をさらに掻き立て、朴大統領の息の根を止める絶好のチャンスとなりうるとの判断をしているようだ。

ここ最近は、労働新聞、わが民族同士などメディアを利用し、「政権打倒」を強調、反政府闘争を扇動している。特に韓国の国政混乱を利用し、サイバーテロなどを通じて韓国社会を撹乱させようと試みている。

その裏には、核やミサイルなど直接的挑発ではなく、サイバーテロなど、出処を探るのが難しいタイプの挑発を行い、「南南葛藤」を煽ろうとする意図があるようだ。

その一例が、ウイルスメールの流布だ。

北朝鮮は「崔順実ゲート」を利用して、ウイルスが仕込まれたメールを流し、ハッキングを行おうとしている疑いが持たれている。メールに添付された「憂慮される大韓民国」のタイトルのファイルを開くと、パソコンがウイルスに感染し、北朝鮮のハッカーに操られるというものだ。

京畿大政治専門大学院のカン・ソクスン教授は「現在北朝鮮は、国営メディアを総動員して混迷する韓国の政局をさらに混乱させることに注力している」「軍事的挑発ではなく、韓国の妨害を当面の最優先課題としているようだ。サイバーテロもその流れと関係する」と指摘した。

もちろん、北朝鮮の最終目的が「米朝対話を通じた平和協定」締結であるだけに、挑発カードはいつ切り出すかわからないとの見方もある。韓国の次期政権の対北朝鮮政策が具体化していないだけに、様子見しているという指摘だ。

牙山政策研究院のコ・ミョンヒョン研究委員は「北朝鮮の興味は、米国との対話」「時期の予測は難しいが、米国大統領選挙の結果とは関係なく、北朝鮮は挑発行為を行うだろう。米国の次期政権の外交アジェンダに、北朝鮮を入れることが重要な目的だからだ」と述べた。

今のところ、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)が何らかの兆候を見せているとの報告はない。

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