韓国では、宗教がらみの不祥事が後を絶たない。高校生ら304人の死者・行方不明者を出した大型旅客船・セウォル号の沈没事故が典型である。旅客船のセウォル号のオーナー、兪炳彦(ユ・ビョンオン)氏は救援派と呼ばれるキリスト教系新興宗教の教祖だった。

仏教もキリスト教も

そしてそれと並び、韓国史上最大級のスキャンダルと言えるのが、朴槿恵大統領の知人である民間人女性、崔順実(チェ・スンシル)氏が、国家機密や政府人事に介入していたとされる問題だ。

崔順実氏は、新興宗教団体「大韓救国宣教会」の総裁だった崔太敏(チェ・テミン)牧師の5番目の娘だ。崔太敏氏は1974年、母を失った朴槿恵氏に接近し、教会の名誉総裁に担いだ。ここから、朴槿恵氏と崔順実氏の関係が始まったとみられる。

興味深いのは、崔太敏氏の過去だ。

確たる情報は少ないのだが、韓国の報道などを総合すると、生涯で8回も改名を繰り返した崔太敏氏は、最初は仏門の僧侶となり、次にシャーマニズムの新興宗教団体を設立。次はどういうわけかカトリックの洗礼を受け、最後に作った大韓救国宣教会はプロテスタントの団体である。

ほとんど何でもありなのだ。

このような背景があるために、野党国民の党の朴智元(パク・チウォン)非常対策委員長などは「朴槿恵大統領は崔太敏氏、順実氏親子の邪教に騙され、こんなこと(機密文書流出)をしたとしか思えない」と批判。

さらに、与党セヌリ党の鄭斗源(チョン・ドゥウォン)前議員も、京郷新聞とのインタビューで朴槿恵大統領と崔順実氏との関係を「呪術的、シャーマニズム的」「朴槿恵大統領にとって、実の姉の朴槿恵氏、弟の朴志晩氏よりも、崔順実氏こそが家族」と語っている。

もちろん、民主主義社会において信仰の自由は大事なものだが、大統領ともなれば、国民に無用な疑いを持たれてはならない。

冒頭で述べたように、韓国では宗教がらみのスキャンダルが絶えない。セウォル号事件ひとつとっても、その真相解明には高度な客観性と国民からの信頼が重要なのに、朴槿恵政権にはもはや、それがあるとは言えない。現に事件の処理に失敗し、国民の分断を招いている。

そもそも、セウォル号が沈んだこと自体は朴槿恵氏に責任がなかったとしても、乗客を救えず、むざむざ見殺しにしたことに対しては、大統領は責任がある。朴槿恵氏はあの時点で辞めてもおかしくはなかったのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

    関連記事