フィリピン下院で行われた聴聞会で、刑務所内で出回っている覚せい剤の相当部分が北朝鮮製との証言が飛び出したとフィリピン・インクワイアラー紙が報じている。

マニラ郊外のニュービリビッド刑務所で覚せい剤の密売を行っていたジェイビー・クリスチャン氏が、フィリピン下院で開かれた聴聞会で証言台に立ったのは今月10日のこと。

北では「覚せい剤ダイエット」も

この席でクリスチャン氏は、覚せい剤(フィリピンでもシャブと呼ばれる)は中国と北朝鮮から来たものだと証言した。米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は北朝鮮製の割合が6〜7割を占めると報じている。

同氏によると、刑務所内の中国系の覚せい剤密売組織は、外部の中国系の組織と手を組み、携帯電話を使って、外部との連絡や送金を自由に行い、大々的な密売を行っていた。また、覚せい剤を内部に持ち込むために、矯正局の職員に毎週10万ペソ(約21万円)のワイロを渡し、警報装置の電源を切らせていた。

刑務所内には薬物やギャンブルで得られた5000万から1億ペソ(約1億600万円〜2億1300万円)が常に蓄えられている状態だったが、同氏はそのうちの200万ペソ(約427万円)を現職上院議員のレイラ・デ・リマ氏に手渡したと証言し、大スキャンダルへと発展している。

周知の通り、フィリピンのドゥテルテ大統領は高い支持率を得て、暴力的な麻薬対策を進めている。

その一方、北朝鮮においても覚せい剤の密造・密売は重罪だ。海外のドラマや映画をこっそり視聴した「罪」と並んで公開処刑にされる数が多いのも、薬物事犯である。

ドゥテルテ氏も「麻薬中毒者など私も喜んで殺す」と宣言、就任100日の間に容疑者段階で警官に殺害された者は1300人以上、自警団による処刑や麻薬組織内の抗争によるとみられる死者は2000人を超えた。

もっとも、北朝鮮はかつて、外貨稼ぎのための国策として覚せい剤を製造し、日本や中国に密輸してきた過去がある。この点で、正恩氏とドゥテルテ氏の立場は異なる。富裕層の間で「覚せい剤ダイエット」が流行るほどの北朝鮮国内の薬物汚染は、まさに「自業自得」と言えるものなのだ。

このような経緯を踏まえれば、ドゥテルテ氏が国内の薬物汚染を本気で取り締まる気なら、金正恩氏に対して何らかのアクションを起こしてもおかしくはない。

超大国、アメリカの大統領に食ってかかる2人の指導者が舌戦を繰り広げたら、どのような様相を見せるのだろうか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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