4年から6年ものあいだ、精魂かけて育てた朝鮮人参が一夜のうちに姿を消す事態を静観するほど、彼らはお人好しではない。泥棒に現れた北朝鮮住民を見つけ次第、激しい暴力をもって撃退する。一方の泥棒側も生活がかかっているため、易々とやられる訳にはいかない。しぜん、対立はエスカレートする。
このため、中国の栽培業者は武装して対抗する。カマやクワなどの農具を用いるのはまだマシな方で、鋭い刃物や、果ては猟銃までも問答無用で発射するまでになった。素人である北朝鮮住民が銃にかなうはずもなく、重傷を負ったり、運が悪いと死亡することもある。死んだ場合は栽培業者の手で、そのまま山に葬られる。人参畑は山奥にあるため、銃声も遠くまで届かず、万一、中国公安(警察)が駆けつけても「動物だと思って撃った」と言えば、事件にはならない。