徹底的かつ透明な支援条件を提示できないまま行われる無分別な支援は、金正恩の立場を強め、地位を高める政治的な目的に利用されることになるというのがその理由だ。
過去、未熟な監督・監視の下で行われてきた北朝鮮への人道支援は、飢餓の蔓延により政権維持に不安を覚えていた独裁政権に「恵みの雨」のような作用をもたらした。支援物資の大部分は飢餓にあえぐ住民ではなく、北朝鮮の軍隊の手にわたったからである。
例えば2005年、支援物資を積んだ船が清津(チョンジン)港に到着する際に、物資を受け取ったのも軍隊である。
病院が横流し
軍はこれを悟られないよう、港に出入りするすべての部隊の自動車のナンバープレートを、わざわざ軍用のものから民間用のものに付け替えた。さらに、荷を運ぶ兵士も私服に着替えさせる徹底ぶりだった。