台風10号(ライオンロック)による甚大な被害を被った北朝鮮北東部では「また台風が来るかもしれない」という噂が広まり、人々が不安に震えている。当局は10万人もの人員を動員して復旧に全力を尽くしていると宣伝しているが、的はずれなことを繰り返し、人々の怒りを買っている。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の両江道(リャンガンド)の情報筋が語ったところによると、大紅湍(テホンダン)郡の協同農場は、西頭(ソドゥ)分場を除いて、水害の被害はほとんどなく、ジャガイモは1ヘクタールあたり平均30トン以上の収穫が得られた。これは世界平均収穫量を遥かに上回る豊作だ。

しかし、それに水を差すように現地では「また台風が来る」という噂が流れ、幹部も農場員も不安に駆られている。収穫期に雨が降ると、ジャガイモは数日で腐ってしまうからだ。

収穫が急がれるが、中央党と農業省は「いかなる手段を使ってでも台風による被害を防げ」との指示を繰り返すばかりで、何ら支援策を示そうとはしない。そればかりか「台風で農作物に損害が出たら処罰する」と訳の分からないことを言い、現地住民の怒りを買っている。

そのうえ、慈江道(チャガンド)の情報筋によると、内閣農業省党委員会から次のような通達が下された。

「台風に対処できず穀物に損害が発生すれば、協同農場に対して連帯責任を取らせ処罰する。」

ただでさえ不安に駆られているところに、このような通達が下され、幹部も農場員も「中央は、台風を防ぐ方法を知っているんだったら、まともな対策を立ててみろよ」「核兵器やミサイルを作ると言うくせに、大雨の被害を防ぐ方法はないのか」などと激しく反発している。

今回の水害では、中国吉林省の延辺朝鮮族自治州でも甚大な被害が発生した。中国当局は、テレビ、ラジオ、携帯電話の一斉メールなどで迅速な情報伝達を行い、救助や復旧に際してはヘリコプター、ボート、重機を動員している。

一方の北朝鮮では、防災インフラは皆無に等しく、正確な気象情報を伝えるメディアもない。情報筋は「今度来る台風はどれぐらいの勢力で、どこに向かっているのか」とRFAの記者に逆に質問する有様だ。

また、被害を出すたびに大量の人員を動員して復旧作業をするしかない。ところが、革命史跡が最優先にされ、地域住民から怨嗟の声が上がっている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、人口12万の茂山(ムサン)郡では、中心市街地の半分にあたる約1万世帯が浸水被害を受け、被災者は数万人に達している。

当局は、被災者向けの住宅建設はそっちのけで、革命史跡、スローガンの復旧に力を入れており、セメントなどの資材を大量に投入している。当然のことながら「まもなく冬がやってくるというのに、トンチンカンなところに資材を使って無駄にしている」(情報筋)と当局を非難する声が上がっている。

当局が何ら対策を示さないことに対して、被災者の間から「自分の暮らしは自分で取り戻す」という声が聞かれるという。これは、脱北して中国に働きに行くということを意味すると情報筋は伝えた。

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