日本政府は、5回目の核実験を強行した北朝鮮への独自制裁を検討している。しかし、どのような制裁なら効果を生むのだろうか。

北朝鮮が1月に4回目の核実験を強行した際には、日本は北朝鮮への送金規制や同国経由船舶の入港禁止などの制裁に踏み切った。自民党はこれに加え、迂回送金の防止策や朝鮮学校への補助金支給の全面停止など、未実施の制裁を実行するよう9日の声明で求めている。

拷問と公開処刑

日本政府が北朝鮮に、断固たる姿勢を示すのは必要なことだ。しかし実際のところ、いままでと同じ考え方をしていては、日本政府にできそうなことは何もなくなっている。自民党が、朝鮮学校への圧力を求めているのがその証左だ。

北朝鮮は、韓流ドラマをこっそり見ていただけの人々を、拷問したり公開処刑にしたりしてしまうような残忍な独裁国家である。日本で朝鮮学校に通う子どもたちや親たちが苦しむようなことになっても、屁とも思わないだろう。

そんなことぐらい、自民党の政治家たちもわかっているはずだ。わかっているけど、それくらいしか思いつかないから「やろう」と言っているのだろう。

また、世論に対する「イメージ先行」の拙速な対北圧力が、むしろ日本の対北情報戦能力を減退させてきた事実とも向き合わなければならない。

金正恩体制と「対決」を

では、日本にできそうなことは、本当にこんなことぐらいしかないのだろうか。

日本は近年、EUとともに毎年のように、北朝鮮の人権状況の改善を求める国連決議を主導している。その蓄積の上で7月、米国は金正恩氏に人権侵害の責任を問い、初めて個人として制裁指定した。

恐怖政治で国を支配する北朝鮮の体制に、人権侵害を完全に止めることなど絶対にできない。つまりそれを迫るということは、日本として金正恩体制を対決することを意味する。

いずれにせよ、金正恩氏には核兵器を手放す気などまったくない。彼に退場してもらわなければ核の脅威は除去できないのだから、遅かれ早かれ対決するしかないのだ。

この機会に、日本政府は、北朝鮮の民主化を追求する動きを支援していくことを明確にする。その手始めに、米国にならって金正恩氏に人権制裁を科す。新たな対北圧力は、こういったことから始めるべきだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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