7日、聯合ニュースが韓国統一省の集計として報じたところでは、1月から8月末までに韓国に入国した脱北者は890余人で、前年の同じ時期に比べ15%増加した。

韓国に入国する脱北者の数は2009年には2914人に達したが、金正恩政権になって以降、減少傾向が顕著で、2012年に1502人、2013年に1514人、2014年に1397人、昨年は1276人となっている。減少の理由として考えられるのは、国内経済の若干の好転と、当局による中朝国境の監視強化、そして脱北の厳罰化と秘密警察の暗躍などだ。

美女脱北で公開処刑か

だが、今年は現在のペースが続くと、年間の脱北者数は約1500人となる。増加に転じた背景には何があるのか。

まず言えるのが、海外駐在の外交官は海外派遣労働者の脱北が目立つということだ。4月には、中国の北朝鮮レストラン従業員ら13人が集団で韓国へ亡命。7月には太永浩(テ・ヨンホ)駐英公使ら3人の外交官が家族とともに亡命した。

ほかにも、今年韓国入りした北朝鮮の海外派遣労働者は数十人に達するとされ、朝鮮労働党の外貨稼ぎ担当幹部の韓国亡命も伝えられている。

海外に派遣されている北朝鮮労働者たちの境遇は悲惨だ。低賃金や長時間労働は当たり前で、反発すれば、同行している国家安全保衛部(秘密警察)要員たちから凄惨なリンチを受けることもある。

ちなみに、レストラン従業員たちの集団脱北を巡っては、公開処刑が行われたとの情報もある。

一方、北朝鮮でエリートに属する外交官や外貨稼ぎ担当者が脱北するのは、対北朝鮮制裁が強化されて以降、上納金の負担が大きくなったことが背景にあるようだ。

日本のアニメが理由で?

さらに韓国では、最近の脱北者の傾向について「より良い暮らしの機会を求めて脱北する『移民型』がこれまでに比べて多くなった」との話も出ている。

聯合によれば、韓国統一省が脱北者を対象に行った調査で、北朝鮮にいたころの所得について「普通以上」と回答した割合は、2001年以前は19%だったが、2014年以降の調査では55.9%に増加。生活水準が「中・上流」だったする回答者も2001年以前は23.5%だったが、2014年以降の調査では66.8%に増えた。

前述の太氏にしても、10年にわたって英国に在住する中で、子どもたちが日本アニメのファンになるなど資本主義の文化に馴染んでしまい、帰国したら生死かかわるたいへんな問題に直面しかねないというリスクを感じていたはずだ。

8月末現在、韓国に居住する脱北者は2万9688人。今年10月末から11月初めにかけて3万人を超えるとみられており、今後も増加していく。これから脱北してくる人々は、北朝鮮のどのような姿を語るのだろうか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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