深刻な外貨不足に苦しめられている北朝鮮は、労働者の海外派遣を拡大しており、その数は現在5万人から6万人に達すると言われている。さらに最近では、今年2月に閉鎖された開城(ケソン)工業地区の韓国企業で働いていた労働者の海外派遣も進めている。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると現在、海外に派遣する労働者の選抜作業が全国規模で行われている。

中でも注目すべきは、開城工業団地で働いていた労働者たちを巡る動きだ。すでに、5万人のうち4万人が海外に派遣されている。裁断、裁縫などを担当していた女性熟練工のほとんどが、中国やロシアの衣料品工場で働いているという。また、機械加工や組み立てを行っていた男性労働者は、東南アジアや中東に派遣されている。

北朝鮮の開城工団開発総局は、工団閉鎖後の労働者の処遇に頭を痛めていた。

職を失っただけではなく、韓国から工業団地を経て流入していた様々な文物が入ってこなくなり、開城市民の不満が溜まっていたからだ。高収入の仕事を斡旋するとことで、鎮静化しようとの意図があったものと思われる。

通常、海外派遣労働者は健康診断に加え、本人の思想に問題はないか、家族や親戚に問題のある人間はいないかなどを調べるために、職能団体など政治組織が発行する「推薦書」や、地域担当の保安員(警察官)、保衛員(秘密警察)が作成する「思想動向保証書」などで書類審査を行う。

開城工団の韓国企業に派遣されていた人々は、すでにこのような手順を踏んでいるため、改めて審査を行う必要がない。また、資本主義の仕組みにもある程度慣れているため、海外に出てショックを受けて思想的に動揺する心配も少ない。

しかし、北朝鮮の労働者の海外派遣に対する国際社会の風当たりは徐々に強くなりつつある。

長時間の強制労働、賃金の未払いなどの人権問題が指摘されているからだ。

米政府系のラジオ・フリー・アジアはポーランドの造船所が、今後北朝鮮労働者を雇用しないことを決定したと報じている。ノルウェーの雑誌「テクニック・ウケブラッド」は、造船所担当者の話として、雇用していた北朝鮮労働者は8月1日に全て離職し、今後は雇用しない方針だと報じた。

同造船所では、北朝鮮労働者の劣悪な労働環境、長時間労働、死亡事故がドイツのVICE Germanyに報じられて、社会問題となっていた。また、大口のクライアントであるノルウェーの船舶会社が船舶建造の注文を取りやめるなど、造船所には圧力がかかっていた。すでにポーランド当局は、北朝鮮労働者に対する新規就労ビザの発行を停止している。

また、マルタ政府も北朝鮮労働者の受け入れを取りやめており、EU圏内からは、北朝鮮労働者が完全に締め出されている。

さらには米国の動向も注目される。

米国務省は、議会に提出した報告書で、北朝鮮労働者を受け入れている国や企業を名指しし、強制労働、人身売買、強制送還などの人権侵害に対する監視を強める考えを示した。また、これらの人権侵害を事実上幇助している中国やロシアなどに対しても圧力を行使していく方針だ。

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