北朝鮮当局が今年、これまでに60人の国民を公開処刑したと、聯合ニュースが報じている。金正恩体制発足後の年平均の処刑者数(約20人)の2倍にもなる数だという。

美女脱北でも処刑

聯合が、北朝鮮内部の消息筋からの情報として報じたところでは、北朝鮮当局は今年2月初旬、脱北者の家族やブローカー数十人を「スパイ」の罪で処刑。4月にも中朝国境の街である両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)で脱北ブローカー約10人を銃殺した。恵山では同じ時期、韓国の映画やドラマなどを視聴した住民数人を銃殺し、7月には江原道(カンウォンド)元山(ウォンサン)などで違法薬物を使用した住民や売人など約10人を処刑したという。

こうした情報を見て気づくのは、脱北に対する締め付けの厳しさだ。聯合は言及していないが、4月に中国で発生した北朝鮮レストラン従業員らの集団脱北を巡っても、公開処刑が行われたとの情報がある。

女子大生の悲劇

脱北というのは、言ってみれば体制に対する究極のサボタージュだ。金正恩体制は「70日戦闘」「200日戦闘」といった大増産運動を相次いで行い、国民が国家の言うとおりに動く秩序の再構築をねらっているようだが、脱北は、それに対する反抗とみなされているのかもしれない。

聯合によれば、国民を取り締まる組織「312常務」が職場や居住地から離脱した住民を逮捕し、強制労働に投入する活動を行っているという。

それにしても恐ろしいのは、金正恩体制が庶民に対して容赦なく牙をむいていることだ。正恩氏の叔父である張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長の処刑や、玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)前人民武力部長の粛清は、権力闘争の一環だったと見ることもできる。

だが、外国のドラマを観ただけで銃殺とは、あまりに残忍すぎる。また、銃殺まではされずとも、拷問や投獄などの虐待を受けている人の数ははるかに多いだろう。実際に最近、当局に逮捕された女子大生の悲劇が伝えられたばかりだ。

国連で北朝鮮の人権侵害を追及する決議が繰り返し採択されているように、国際社会はすでに、この残酷な現実を認識している。それでいて看過するようなことは、これ以上、続けるべきではない。主要国はハッキリと、金正恩体制の変更を目標として掲げるべきなのだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記

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